2025年日本株はなぜ「上値が重くなる」のか 市場関係者が「非製造業株と中小型株」に魅力を感じるワケ
裏返せば、期待値を高めるサプライズがあれば、さらなる上振れもありえるということだ。その点、国民民主党が主張するように「103万の壁」を一気に178万円に引き上げるようなことがあれば、内需拡大から企業業績が上振れ、株高につながる可能性もあるという。 また、大きく円安に振れるようなことがあれば業績拡大につながるが、ドル/円は狭いレンジで推移する可能性が高い。 「17年から21年までの第1次トランプ政権では、米中貿易戦争が激化しましたが、ドル/円はおおよそ105~115円というレンジ相場でした。その前の第2次オバマ政権のときがだいたい90~125円だったことと比較すると、稀に見る低ボラティリティ(変動率)だったのです。仮に長期金利は高止まりしても、トランプ氏は国内製造業の保護のためにドル高をけん制する発言を繰り返すでしょう。そうしたことを勘案すると、25年以降4年間のドル/円は150円を挟んで上下10円幅程度で推移するのではないか」(石黒氏) ■上昇力は衰える 高値は更新しても、23~24年と比較したら日経平均の上昇力は衰えるというのが共通した見方。そのため、相場の主役は製造業を中心とした主力株から非製造業株や中小型株に変わりそうだ。 「特にアメリカで稼いでいる非製造業は伸びる。日本よりもアメリカの売上比率が高い住友林業は、多少金利が上昇しても米国内は構造的に住宅不足が続いているので、右肩上がりの業績が続くと見られています。IP(知的財産)に強みがある任天堂、サンリオ、バンダイナムコホールディングス、求人サイトの『Indeed』がアメリカでも好調なリクルートホールディングスなども人気化しやすい。こうした企業は関税リスクがないけれど、円安メリットはあるという点でトランプ政策の恩恵を受けやすいのです」(志田氏)
個別物色が進んで、出遅れ銘柄が再評価されるかもしれないという。 「アメリカの長期金利が高止まりしているときは、日本のグロース株(成長株)にはお金が流れにくい。米国債を買っておけば、ほぼリスクゼロで4%以上のリターンが得られるからです。だから、日本のグロース株のなかには、増収増益を続けているのに、株価が伸び悩んでいる銘柄も少なくない。その典型が、医療情報サイトなどを運営するエムスリー。同社は営業利益が順調に伸びているのに、株価は4年前より8割以上安い。中小企業までDXが進み始めたので、Sansanやサイボウズなども水準訂正が進んでもおかしくない。アメリカの利下げが進んだ影響で、グロース復調の下地が整ってきた」(同) アメリカでも同様にDX系は伸びそうだ。 「トランプ氏は国内製造業を守る姿勢を取っていますが、第一次トランプ政権の4年間で最も伸びたのはテック系でした。S&P500が4年間で64%上昇したのに対して、NASDAQ100の上昇率は158%を記録したのです。今回はイーロン・マスク氏が政府効率化省のトップになることから、DX化の加速で歳出削減を進めるのは明らか。マグニフィセント7(アマゾン、グーグルなどテック系大手7社)を中心にテック系の業績拡大は続くでしょう」(石黒氏) ■いつ弾けてもおかしくない ただし、アメリカの株価には過熱感も見られることは留意しておきたい。 「ゴールドマン・サックスは24年前の大統領選前のことですが、『今後10年はS&P500の年率の収益率が3%に低下する』というレポートを出しています。バフェット指数(時価総額をGDPで割った値/相場の割高・割安感を示す)も、00年のITバブル時代の高値を大きく超えて過去最高の200%に。いつバブルが弾けてもおかしくない状況にあるんです。中国経済の停滞やトランプ関税リスクから、日本の製造業も26年3月期は減益予想に転じる可能性もある。そうなれば、25年6月以降は大きく調整が入るでしょう。24年8月同様に、相場がクラッシュすることも考えられる」(国内資産運用会社関係者) 例年、相場は夏枯れしやすいだけに要注意。少なくとも、25年は上値を買っていく投資は避けたほうがよさそうだ。 (ジャーナリスト・田茂井治)
田茂井治