ODA大綱改め「開発協力大綱」 他国軍支援の解禁に2つの問題点
なぜ他国軍隊への支援打ち出す?
新大綱がODAという言葉を避けて「開発協力」としたのは、ODAではない公的資金協力(OOF)やNGOによる協力などとの連携にも言及しているからでしょうが、その裏には軍隊に対する援助がODAとして認められないことへの懸念があると思います。 日本の新方針は軍事援助をするということではないので、米国とは異なっているように見えます。しかし、他国の軍隊に援助する理由も必要性もなく、また、DACでの審査の問題もあり、さらには外交上の問題があるのになぜそれに踏み切るのでしょうか。それは、軍隊にはいっさい援助しないというこれまでの方針に穴をあけることに眼目があるのではないでしょうか。もうしそうだとすれば、形式的には非軍事目的とはいえ、実質的には日本が米国型の軍事援助国に近づく一歩を踏み出していると考えざるをえません。 新大綱は、「中東については、日本のみならず国際社会全体にとって、平和と安定及びエネルギーの安定供給の観点から重要な地域であり、平和構築、格差是正、人材育成等の課題に対する協力を行い、同地域の平和と安定化に積極的に貢献し、我が国と中東地域諸国の共生・共栄に向け支援を行っていく」と注意深く述べていますが、例えば、過激派組織の「イスラム国」に対する攻撃を強めているヨルダンの軍隊に対して援助を供与することなども可能になります。 政府はこれまで原則禁止であった日本からの武器輸出を緩和することを決定済みです。今般決定された新大綱はわが国の経済協力の性格を大きく変える危険性を秘めており、重大な問題です。国民はさらに第2歩、第3歩が踏み出されないよう注視する必要があるでしょう。 (美根慶樹・平和外交研究所)