ODA大綱改め「開発協力大綱」 他国軍支援の解禁に2つの問題点
政府は2月10日、ODA大綱に代えて新たに「開発協力大綱」を閣議決定しました。従来は他国の軍へはいっさい援助を供与しなかったのですが、新しい方針では災害救助などの非軍事目的の場合には認める道を開きました。 【写真】「武器輸出三原則」を変えたらどんな影響が出る? 新方針は、例えば、A国の軍隊の行動が非軍事目的であるか否かについて、「その実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」としています。慎重に判断するという趣旨なのでしょう。しかし、軍隊にはいっさい援助しないという旧大綱の方針と、それを可能にした新方針との間には大きな違いがあります。
間接的に戦争に援助の可能性も
政府が非軍事目的であることを確保するのだから大丈夫だ、と考えるのはあまりにも表面的です。たとえば、A国の軍隊が、一方では戦争をしながら、他方で災害救助に従事している場合に、災害救助だけに限定して援助するというのは形式的にはあり得るとしても、実質的には保証になりません。A国の軍隊の財布は一つであり、災害救助に援助することは間接的に戦争にも援助することになるからです。もう少し正確に言えば、災害救助の関係で援助してもらった分だけ戦争に資金を回せるのです。 もし、「災害救助」に貢献したいならば他に方法があります。たとえば、避難民の支援であれば、国連の難民高等弁務官(UNHCR)に拠出すればよいのです。実際、これまでそうしてきています。あるいは、A国の軍隊でなく「政府」に対し災害救助のために援助すればよいのです。これも実際してきています。つまり、災害救助に協力するのはよいのですが、軍隊に援助する必要はないのです。
ODAとして認められない?
また、国際的には、日本が行なった援助がODAとして認められるかという問題があります。この審査はDAC(開発援助委員会)という国際機関があらかじめ定められた基準にしたがって公平に行います。ODAとして認められるには、当然ですが、開発目的でなければならず、軍事目的であればODAとして認められません。もちろん、審査の対象となっている国の政府が「軍事目的」ですと自ら告白することはまずないので、DACでは各国政府の説明にとらわれず、客観的に開発目的であるか審査します。 新大綱は「開発協力の実施に当たっては,軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」と断っていますが、これは日本政府の方針に過ぎず、DACは異なった結論を出す可能性があります。 もし認められないと日本としてのODAはそれだけ少なくなります。ODAが多いか少ないかは、国によって経済力が違うので、ODAのGDI(国民総所得)に対する比率によって表示されます。これは各国の開発協力に対する熱意と努力の度合いを示す指標であり、重要です。日本を含め大多数の国はこの比率を高めるのに懸命に努めてきました。この比率が下がることは日本の外交上、大きな問題となります。 米国の比率は世界第1の経済大国としては低いですが、対外政策の遂行上、巨額の軍事援助を供与しているからです。このような例は、冷戦時代のソ連などにもあったようですが、これらの国の対外援助は開発目的だけでは論じられません。