ヨシムラSERT Motul、荒れたレースを制し3年ぶり王座奪還。YARTヤマハはトラブル抱えるも3位/2024EWC第4戦ボルドール24時間
9月14~15日に『2024FIM世界耐久選手権(EWC)第4戦ボルドール24時間耐久ロードレース』の決勝レースが、フランスのポール・リカール・サーキットで行われた。737周を走破した#12 ヨシムラSERT Motul(グレッグ・ブラック/エティエンヌ・マッソン/ダン・リンフット)が総合優勝を飾り、2024年シーズンのチャンピオンに輝いた。 【写真】引退レースの最終スティントを終えたニッコロ・カネパ(YART – YAMAHA)/2024EWC第4戦ボルドール24時間 決勝 第3戦鈴鹿8耐から約2カ月が立ち、EWCシリーズはいよいよ最終戦を迎えた。王座決定戦となる第4戦ボルドール24時間へは、ランキング首位の#1 YART – YAMAHAが#12 ヨシムラSERT Motulに6ポイント差をつけた拮抗した状態で突入した。 なおFormula EWC(EWC)、Superstock(SST)の両クラスの上位4チームにチャンピオン獲得の可能性が残されていた。SSTクラスでは綿貫舞空が所属している#36 3ART BEST OF BIKE、#25 Team Etoile(渡辺一樹/亀井雄大/大久保光)もそのなかに含まれていた。 予選はEWCクラスは昨年同様に#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAMがポールポジション、SSTクラスのトップ3は#9 TECMAS MRP BMW RACING TEAM、#713 Hungarian Endurance Racing Team by Moto-Jungle #25 Team EtoileとBMWが圧倒的な最高速とタイムを叩き出した。 ■序盤からトップチームにアクシデント勃発 最終戦ボルドールは、現地時間15時(日本時間22時)にル・マン式スタートで火蓋が切られ、全45台が一斉にスタート。ロケットスタートに定評のあるグレッグ・ブラック(ヨシムラSERT Motul)が、難なくホールショットを奪う。2番手は予選最速のBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM、3番手はKM 99が続き、YARTヤマハは少々出遅れる格好となった。 そのあと早々にTATI TEAM BERINGER RACINGが早々にトップの座を奪い、5周目にはアラン・テシェ(F.C.C. TSR HONDA FRANCE)も2番手に浮上。2台のホンダCBR1000RR-Rが先頭集団を形成し、接近戦を繰り広げていく。そのなか、開始42分でTATI TEAMが真っ先に最初のピットをこなしTSRホンダ、ヨシムラSERT Motul、BMWモトラッド、HONDA VILTAIS RACINGのオーダーへと変わる。 その5分後には上位4台が一斉にピット作業をこなし、追い上げていたYARTヤマハも続いてピットイン。ルーティンピットかと思われたが、カネパの走行中にリヤタイヤにトラブルがあったようで一度ガレージにマシンを入れてしまう。4分40秒ほどの修復作業を終えて復帰したが、39番手まで後退した。 さらに、3番手のTATI TEAMにもトラブルが襲い、トップに離されまいと喰らいついていた2番手のTSRホンダも1時間30分ほどで、リヤタイヤが壊れる。その際のマシン後部の損傷が激しく、スイングアームや諸々のパーツを交換し、序盤から大きく順位を落とすことに。YARTヤマハとTSRホンダが似たようなトラブルに見舞われ、序盤から波乱の展開となった。 決勝日は気温、路面温度ともに上昇し、おそらくその影響でハードタイヤが保たない状況だったと推測され、それをいち早く察知したトップ浮上のヨシムラSERT Motulは、ソフトタイヤを使用して快走を続けていく。2番手にはBMWモトラッド、3番手にはHONDA VILTAIS、少し離れてKM 99がつける状況だ。 また、SSTクラスは序盤からTECMAS MRP BMW RACING TEAMがトップを死守しており、2時間ほど経過した時点では総合6番手から12番手までSSTクラスが占める状況だった。日本勢のTeam Etoileはスタートで少々出遅れるも、序盤に渡辺一樹が予選を上回るタイムで追い上げを図り、着実に順位を上げていた。 ■ナイトセッションヘ突入、レース中盤はEWCとSST両クラスでバトルが勃発 夕暮れ時を迎え、空が徐々に暗くなり始めるとヨシムラSERT Motulは淡々と周回を重ねてトップ独走状態を築いていた。すると、ここでHONDA VILTAISとKM 99の抜きつ抜かれつの3番手争いが、長期戦で繰り広げられた。 さらに、その後方からは序盤でトラブルに見舞われたYARTヤマハが、SSTクラスの車両をごぼう抜きにして5番手に姿を現す。そしてTSRホンダも、24番手まで回復させ、追い上げを図っていた。また、2番手のBMWモトラッドもじわじわとトップに詰め寄り、11時間を前にヨシムラSERT Motulから首位を奪取。 しかし、なんとその約30分後にはBMWモトラッドが痛恨の転倒。迅速に修復作業が行われ、最小限にタイムロスを抑えて5番手で復帰すると、再び1分53秒台の好ペースで周回を重ねていく。YARTヤマハ、KM99と次々にパスし、さらにHONDA VILTAISのピットのタイミングで2番手まで挽回して見せた。しかし、BMWモトラッドから5番手のYARTヤマハまでの4台が同一周回で、ピットのタイミングで幾度となく順位が入れ替わる。 さらにSSTクラスにも各所でのバトルが繰り広げられ、上位のTEAM AVIOBIKE BY M2 REVOやCHROMEBURNER-RAC 41-HONDAにトラブルやペナルティが相次ぐ。そのなか日本勢のTeam EtoileがSSTクラストップ、総合6番手にまで上り詰めていた。しかし、2番手のTEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREと同一周回なため、油断を許さない状況だ。 夜間での走行中も各所でバトルが繰り広げられていたが、序盤から中盤にかけてセーフティカーの導入はなく、刻々とレースは進んでいく。しかし、上位勢もトラブルに見舞われたように、転倒やリタイアを強いられるチームも多くあり、すでに13台がリタイア。一時トップを走っていたKAWASAKI WEBIKE TRICKSTARも、そのチームのひとつだった。 ■トップ快走のヨシムラが20ポイント加算。次々と上位勢を襲う悲劇 依然としてヨシムラSERT Motulが独走状態でレースを牽引し、2番手以下を4ラップダウンへと陥れていた。そのなかBMWモトラッドも必死にそのギャップを埋め、その後方には同一周回のHONDA VILTAISとKM 99がつけており、順位を入れ替える展開が続く。 すると、15時間ほどで懸命に挽回していたYARTヤマハにまたもトラブルが襲う。カレル・ハニカがコースサイドにマシンを止めており、すぐにピットへ戻ることが出来ずに順位を落としてしまう。懸命な修復作業が行われ、11番手で復帰するも、同じく追い上げを図っていたTSRホンダにも先行を許すこととなった。それによりTeam Etoileが総合5番手に次ぐ展開に。 レースは16時間を迎え終盤に突入すると、少しずつ夜が明け始め、朝日がコース上を照らす。この時点で8時間、16時間とトップに立っているヨシムラSERT Motulには20ポイントが加算されており、チャンピオンシップは逆転。しかし、YARTヤマハも2連覇を目指して、最後まで残された可能性に賭けて再び追い上げを図っていた。 18時間が経過すると、再び上位争いに動きが出た。2番手を走行していたBMWモトラッドが、パーツ交換のためにガレージにマシンを入れた隙にHONDA VILTAISとKM 99が逆転に成功。BMWモトラッドは4番手へと順位を下げることになり、そのあともトラブルが続発し、何度かピットへとマシンを入れることに。 さらに、SSTクラスもTEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREがトップに浮上。BMWモトラッド同様にBMW M1000RRを駆るTeam Etoileは、先行を許した後にほぼ同タイミングでガレージにマシンを入れる。そのあと、復帰したがアウトラップでコースサイドにマシンを止め、大幅にタイムロスし順位を下げてしまう。 さらに、順調に順位を挽回させていたTSRホンダも5番手に浮上した途端、マシントラブルが発生し、コースサイドにマシンを止め、立て続けに上位グループをトラブルが襲う展開となった。残り20時間を前にTeam EtoileとTSRホンダは、懸命な修復作業が行われた後、残り4時間少々というところでリタイアを決断した。 ■ヨシムラが盤石の体制で歓喜の優勝! ヤマハが2-3でカネパに捧ぐ表彰台を獲得 残り4時間、上位勢の順位に動きがあったものの、トップは変わらずヨシムラSERT Motulが死守していた。2番手にはKM 99がつけ、周回数は違うものの、コース上ではランデブー走行となる場面も見られた。すると、その後方につけていたHONDA VILTAISにトラブル発生。エンジンを下ろし、すぐにピットで作業が行われる。 それにより、SSTクラストップのTEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREが総合3番手と表彰台圏内に浮上。4番手にYARTヤマハ、5番手にはCHROMEBURNER-RAC 41-HONDAが上がり、HONDA VILTAIS大幅に順位を落とした。 残り1時間半、3番手と1周差に迫るYARTヤマハは、今回のレースをもって引退するニッコロ・カネパを最終スティントへと送り出す。そして、カネパが3番手をキープしたまま自身のスティント終え、残り40分ほどでマービン・フリッツへとバトンを繋いだ。ピットではチームやクルーからカネパに温かい拍手も送られた。 さらに、トップのヨシムラSERT Motulもエティエンヌ・マッソンが、2番手のKM 99もジェレミー・ガルノニが、それぞれラストスティントへと向かう。序盤から終盤までトラブルやリタイアも相次ぐなかで、ヨシムラSERT Motulは終始安定したペースでトラブルなどを一切寄せ付けない走りを披露。ボルドールにおいて2年連続優勝を果たすなど盤石の体制で、トップチェッカーを受けた。 2023年の優勝時は717周だっが、今年はそれを上回る737周を走破し、開幕戦ル・マン24時間に続く勝利。ヨシムラ創業70周年の節目の年に、3年ぶりとなるシリーズチャンピオンを奪還した。2024年シーズンのEWCはヨシムラSERT Motulが2度の24時間レースを制している。 2位には参戦2年目のKM 99が入り、トップと8ラップ差で総合2位を獲得。3位にはレース中に何度もトラブルに見舞われたが、執念の追い上げで表彰台圏内まで上り詰めたYARTヤマハが入った。2連覇は達成できなかったものの、カネパの引退レースで表彰台をプレゼント。4位にはTEAM18 SAPEURS POMPIERS CMS MOTOSTOREが入り、SSTクラスの優勝を飾った。 5位には終盤も挽回を見せたBMWモトラッドが続き、6位はCHROMEBURNER-RAC 41-HONDA、7位はTRT27 AZ MOTOが入った。最終的にトップ10台のうち、SSTクラスのチームが6台入り、それぞれEWCクラスに一切劣らないペースを披露し、最後まで走り抜いた。 また、一時は表彰台圏内も走っていたHONDA VILTAISはエンジンを載せ替えるという大掛かりな修復を終え、最後はライダーの手押しでフィニッシュ。全体としては18台がリタイアと過酷なレースとなったが、27台が完走を果たした。 また、SSTクラスは総合17位でフィニッシュしたNATIONAL MOTOS HONDA FMAがチャンピオンを獲得。開幕戦ル・マン24時間でクラス優勝、第2戦スパ8時間でもクラス2位を獲得し、シーズンを通して強さを誇示した。 日本勢は、フル参戦1年目のTeam Etoileが奮闘の末にリタイアで終えてしまったが、ランキング5位で終えている。綿貫舞空が所属している#36 3ART BEST OF BIKEが総合9番手(SSTクラス5番手)でランキング4位、石塚健が所属している#14 MACO RACING TEAMは総合11番手となった。 [オートスポーツweb 2024年09月18日]