他の宿はマネできない! 長崎・壱岐島に「最高の料理」を出す家族経営の温泉宿を発見 女将が"リアル縄文人"と呼ぶ食材調達者の正体は?
お刺身は料理長を務める3代目が釣る旬の魚
敏一郎さん以外に3代目も釣り船を出す。この日、夕食に出てきたのは釣ってきたばかりの旬の魚。イカの王様、アオリイカは「イカってこんなに透明だった??」と驚くほど。しかも甘い。敏一郎さんは潮目を見て「今はヒジキが採れそうだ」とか「トサカノリが採れそうだ」と食物の収穫時期をピタリと当て、近くの川や海の塩溜まりで天然物のウナギやハゼ、テナガエビも釣る。 海や川の生き物がいつとれて、どんな調理法がいちばんおいしいか熟知し、市場で仕入れた厳選食材よりもっと鮮度のよい食材を使うからこその味わいがこの宿にはある。
"リアル縄文人"は器用、宿の装飾や道具は自前で作る
「それに"リアル縄文人"は道具は何でも自分で作っちゃうんです。裏庭でとれる竹を加工して、お酒を飲むコップや花を生ける花瓶を作ったり、露天風呂の囲いを作ったり。必要なものは何でも自前で作るんです」と真希子さん。 かけ流しの温泉は65℃と高温で、温度を下げなければそのまま入るのは無理。温度を下げるためには水で薄めるのが簡単だが、そうするとお湯の特徴が薄れてしまう。そこで作ったのが温度を下げるための、直径を細くした竹の筒だ。
壱岐湯本温泉の泉質は鉄分と塩分を含むナトリウム-塩化物泉
壱岐湯本温泉の泉質は鉄分と塩分を含むナトリウム-塩化物泉。私が15年ほど前に訪れた時は赤いお湯だったと記憶していたが、現在は赤というよりは黄褐色のにごり湯といった方が近い。 温泉は地下の熱源や地質活動によって生まれるものだから、地質の変化や季節、気候によっても成分や色合いは変わり、一定ではない。温泉地で「濁っていたお湯が濁らなくなった」とか「低かった温度が高くなった」とか、あるいはその逆はよく聞く話である。「温泉は生き物」だといわれるゆえんである。
開湯は1700年以上前
壱岐湯本温泉の開湯の歴史は1700年前以上といわれる。伝説上の人物とされる神功(じんぐう)皇后が三韓征伐の時に立ち寄ったとか、聖武天皇の御代に僧・行基が国分寺を建立した時に見つけたなどの伝説が残る。 平山家が昭和初期に温泉宿を受け継ぎ、昭和30(1955)年に現在の「旅館」になった。平山旅館の歴史は比較的新しいが、壱岐湯本温泉の中でも「旧湯(きゅうゆ)」と呼ばれ、自噴する元湯を引き継ぐ唯一の宿。この旧湯には、神功皇后が皇子(応神天皇)の産湯に使ったとされる言い伝えがあり、「壱岐湯本温泉発祥の湯」と言われている。