名古屋がルヴァン杯を初V…柿谷曜一朗は古巣セレッソ撃破に何を思ったか?
少年のころから“ジーニアス(天才)”と呼ばれてきた男が見せた一瞬の閃きが、手にしていなかった最後の国内主要タイトルを名古屋グランパスにもたらした。 JリーグのYBCルヴァンカップ決勝が30日に埼玉スタジアムで行われ、名古屋が2-0でセレッソ大阪を撃破して初優勝。1995年度と1999年度の天皇杯、2010シーズンのJ1リーグに続くタイトルとともに、賞金1億5000万円を獲得した。 名古屋は後半2分に獲得した左コーナーキックで、ニアに回り込んだFW柿谷曜一朗が頭で巧みにコースを変え、ファーに詰めたFW前田直輝が押し込んで先制。同34分にはカウンターから、決勝のMVPに輝いたMF稲垣祥が追加点を叩き込んだ。 4歳から心技体を磨いてきた愛着深い古巣セレッソとの大一番で、決勝点をアシストした柿谷は「ぶっちゃけ、やりたくなかった」と本音を打ち明けながら、今シーズンから新天地を求めた名古屋の戴冠に持ち前のセンスを輝かせて貢献した。
セレッソを手玉にとった好アシスト
キッカーを務める東京五輪代表のFW相馬勇紀が、右足を振り抜く直前だった。名古屋が後半2分に獲得した左コーナーキック。ニアのスペースを守っていたセレッソのMF原川力の背後にいた柿谷が、おもむろにその前方へ回り込んだ。 虚を突かれた原川はまったく反応できない。次の瞬間、ジャンプした柿谷の頭をかすめてわずかにコースを変えたボールを、自軍のゴール中央を固めていたセレッソのFW加藤陸次樹、そしてDF瀬古歩夢も何もできずに見送るしかなかった。 ファーにいたDF丸橋祐介が、慌ててクリアする体勢に入るも時すでに遅し。丸橋が伸ばした左足の前へ前田が必死に身体を投げ出し、最後はひざまずきながらも頭でボールをヒット。優勝を手繰り寄せる値千金の先制弾をもぎ取った。 秋晴れの青空へ両手を掲げ、さらに右手で大きなガッツポーズを作った柿谷は、古巣を手玉に取ったアシストを一瞬の閃きに導かれたものだったと明かした。 「相馬選手は速くて鋭いボールを蹴れるんですけど、逆に鋭すぎて手前で(相手に)引っかかる、というケースをなくしたかった。そう思ってあそこへ回り込んだらちょうど来たので、上手く(コースを)そらせてよかったです」 柿谷が前方に回り込まなければ、低く速い軌道を描いた相馬のボールは間違いなく原川にクリアされていた。決勝用に準備してきたセットプレーのひとつに、ジーニアスならではの直感が融合されたゴールで主導権を握った名古屋は、後半途中に4バックから5バックへシステムを変えながら、セレッソの反撃を最後まで封じ込めた。 決勝前日の公式会見で、柿谷は古巣との対戦をこう位置づけていた。 「セレッソにいたときのことを話すつもりはありません。僕個人の思いは捨てて、名古屋グランパスの一員としてタイトルを取りたい。その気持ちに尽きます」