英国総選挙 自動車関連の争点は「エンジン車禁止の時期」「EV支援」か 各党の公約は?
労働党(Labour)
野党・労働党は保守党ほどには力を入れていないが、自動車産業は経済成長を加速させるための重要な柱の1つと捉えている。 ■2030年のエンジン車禁止令を復活させる まず、キア・スターマー党首は、2030年のガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を再導入すると約束した。 昨年、与党・保守党がエンジン車の新車販売禁止を2035年に延期した。これを受けて労働党は、当初の期限に戻すことで自動車メーカーに「確実性」をもたらすとしている。 ■EV購入者の支援 EVについては、「充電ポイントの展開を加速」させることで購入者を支援するという。 充電インフラ企業のZap-Mapによると、2024年5月現在、英国には5336か所、計1万2249基の急速・超急速充電器が設置されている。 労働党は中古EV市場を視野に入れ、バッテリーの健全性基準も導入し、情報をより明確で分かりやすいものにする。 保守党と同様、購入優遇措置は約束していない。 ■近代的な交通システムの構築 その他、労働党は道路の大規模改良を約束している。 マニフェストでは、「英国の再建とは、交通インフラの近代化を意味する」と書かれており、交通網は「長い間プロジェクトが実現されないことに悩まされてきた」としている。 日本のJAFに相当する英国王立自動車クラブ(RAC)のデータによれば、英国全土に100万個以上の「ポットホール(Pothole)」があるという。ポットホールとは路面のくぼみや穴のことで、排水不良やアスファルトの経年劣化により発生し、車両故障の原因や事故につながるとされている。 ポットホール対策の予算は、「費用対効果が悪い」とされるA27幹線道路のアランデル・バイパス工事を延期することで賄われる。 ■ギガファクトリー 労働党は、EV用バッテリー工場を建設しやすくするために国家計画政策を改定し、「自動車産業が世界をリードできるように」新しいギガファクトリー・プロジェクトに15億ポンド(約3000億円)を投入すると約束している。 また、環境負荷の低い水素製造プロジェクトにも5億ポンド(1000億円)を投じる予定だ。間接的に自動車産業、特に大型貨物車両(HGV)向けパワートレインの開発支援などにつながる可能性がある。 また、自動車産業を含む国内の研究開発部門にも資金を投入することを約束している。 ■保険料の引き下げ 労働党は「高騰」する自動車保険料にも取り組むとしているが、その内容については明らかにしていない。 英国保険業者協会は以前、大幅な値上がりの背景として、部品代、修理代、代車費用、人身傷害の保険金請求の増加など、多くの要因を挙げていた。