「甲子園の感激を教え子に」「いつか甲子園で再会を」 高校野球・甲子園塾最終日
日本高校野球連盟が若手指導者育成に実施している研修会「甲子園塾」(塾長=正木陽・日本高野連技術・振興委員長)は1日、3日目の最終日を迎え、全国から集まった受講者27人に修了証が授与された。 仙台一(宮城)部長の阿部翔人さん(30)は石巻工時代の2012年選抜に21世紀枠で出場した当時の主将だった。開会式では「東日本大震災から1年、日本は復興の真っ最中です」と選手宣誓を行った。被災地からの出場で「感動、勇気、そして笑顔。見せましょう、日本の底力、絆を」と語りかけ、感動を呼んだ。 「あの経験、あの高揚感や充実感があって今のわたしがいます」と話す。日体大に進み教員免許を取得した。4年間の非常勤講師を経て、21年4月から保健体育科教員として仙台一に赴任、野球部長となった。「あの感激を生徒たちに味わってほしい。だから教員となり、高校野球の指導者を志しました」 今回の講習ではU18高校日本代表監督の小倉全由さん(67)らの情熱的な指導をみて「熱く指導することが大切だと再認識できました」と話す。講習最後のノックでは選手たちに笑顔で大声を出しながら打った。「甲子園に出る以前に、日ごろ生徒たちと向き合っていくことが成長につながると思います」 千里(大阪)の監督、津本武海さん(32)も金光大阪3年春の選抜で甲子園に出場した経験がある。後に阪神入りする陽川尚将と同じ内野手だったが、ベンチ入りはかなわなかった。それでも開会式でプラカードを持って入場行進した。 「プレーしたかったのはもちろんです。でも甲子園のグラウンドをプラカードを持って歩いた時の感激は忘れられません。だから――」監督として熱い指導を心がけている。 質疑応答で「監督が熱く引っ張るばかりでなく、選手たちが熱くなる方がいいのでしょうか?」と尋ねた。小倉さんから「監督は熱くていい。自分のカラーを出してほしい」と答えをもらった。 「甲子園の心」は、甲子園を目指して練習する日々のグラウンドにあるのだろう。 塾長の正木陽さん(64)は「練習で培われるのは生きる力だと思う。卒業後も教え子たちをずっと見守ってほしい」と話した。高知商時代の教え子、阪神・藤川球児監督を今も「常に見守り応援している」という。 閉講式では全員に修了証が授与された。受講者最年長の小豆島中央(香川)監督・大西玲治さん(40)が「早く帰って、自分の生徒たちに教えたくなりました。野球の縁は大きい。切磋琢磨(せっさたくま)し、いつか甲子園で再会したい」とあいさつした。 受講生たちは2泊3日、寝食をともにし、宿泊先ホテルで懇親会を開くなどネットワークも広がったようだ。 講師の沖縄尚学監督・比嘉公也さん(43)は「これをご縁に練習試合などで交流できればと思います。わたし自身も皆さんと甲子園で戦える日を楽しみにしたい」と話した。 受講生たちは再会を約束してそれぞれの地元へ帰っていった。 (内田 雅也)