『自分撮り』機能付きカメラ 新たなトレンドになれるか
今年に入り、各メーカーが撮影者も写ることができる『自分撮り』の製品を相次いで発売している。『自分撮り』を意味する「selfie(セルフィ)」という言葉が、昨年の英国・オックスフォード辞典の流行語大賞になるなど、自分で自分を撮影することは世界レベルでのトレンドと言える。しかし、今回発売されている製品のコンセプトは、『自分撮り』ではなく『家族の思い出』。スマートフォンでの撮影がSNSなどへの投稿を目的とする自分撮りなら、デジカメやビデオカメラは、撮影者も被写体と一緒に思い出に残すことが新しい撮影スタイルになりそうだ。
キヤノンは、『自分撮り』用のサブカメラを搭載したコンパクトデジタルカメラ「PowewShot N100」を4月に発売。被写体の画像に撮影者も同時に写ることができる“一芸カメラ”だ。しかし、開発のきっかけは「家族の思い出」だという。 「『自分撮り』というよりは、撮影しているも一緒に思い出を残そう、ということが開発の背景です。そのコンセプトありき、で具現化しました。公園にちょっと持って出かけて、家族全員、撮影している人も含めて思い出を残してもらいたい、と考えました」とキヤノンマーケティングジャパン、企画部の阿部氏。 ターゲットはファミリー層。30代から40代の子育て世代だ。「オートに設定してもらえれば、誰でも簡単に操作してもらえるように設計されています」(前出・阿部氏)というように、手軽さが売りのコンパクトデジカメだけに、お父さんだけが撮影者になるのではなく、子供が撮影者になりことも可能。子供が撮影者となっても、一緒に写真の写り、思い出に残していける設計となっている。
パナソニックは、今年2月に『自分撮り』ができるサブカメラを搭載したビデオカメラ「HC-W850M」を発売している。そのコンセプトもやはり「家族との思い出」だ。「撮影者が父親で、子供や家族を撮影することが多いですが、あとで再生するとお父さんが映っていない、ということになります。家族の思い出に撮影者のお父さんが映ってないのは寂しい。家族全員で思い出を残したい、というのが開発の元です」と広報の柴田氏。
実は、2013年の春モデルでも同じコンセプトで、Wi-FIを搭載し、スマートフォンからリモートで操作できる機能を取り入れている。三脚を使って家族全員を撮影できるようになったが、この機能が好評だったこともあり、サブカメラが搭載された今回の製品へと進化した。「元々、2つの連続を搭載したビデオカメラを、という検討を以前からしていました。家族で思い出を残すことをサブカメラで形にすることができました」(前出・柴田氏)。 これから行楽シーズン、運動会シーズンとなるが、これまでの「パパが写らない思い出」から、「家族全員で残せる思い出」へと、“思い出”の形が変わっていきそうだ。