25番継ぎ誓った…「代表で待っててください」 出番ゼロからの飛躍、ライバルへ「追いつきます」【コラム】
背番号変更の背景「あんまり言いたくないですけど…」
両者の関係性に緊張感が生まれたのが、2019年だった。 実はこの年、田中は自らの背番号を32から25に変更している。25は前年まで守田がつけていた背番号である。その理由を尋ねると、「これはあんまり言いたくないですけど……」と前置きしたうえで、田中はこんな思いを語ってくれていた。 「僕自身、選手として守田くんを超えたいというのがあります。守田くんは超えたい存在なんです」 当時の守田はすでに日本代表だったが、だからと言ってそこで白旗は上げない。むしろライバル心を口にしていた。こう言葉を続ける。 「一緒にやっていて尊敬する部分はありますし、日本代表にも選ばれていて凄いな、という思いはあります。守田くんの良さを吸収して得るものもあります。でも、だからこそ負けたくないというのもあります」 田中は、第3節の横浜F・マリノス戦で、ウォーミングアップ中に負傷した大島僚太に代わってスタメンに抜擢されると、攻守で躍動。その後は守田とともにコンビを組む機会が多くなり、シーズン通じて飛躍を遂げた。この年に初制覇したルヴァンカップの決勝でもスタメンとして120分ピッチに立ち続けている。 一方の守田は、6月に免許失効中に道交法違反で検挙されてクラブから処分を受けるなど、ピッチ外の問題も影響し、パフォーマンスに安定感を欠くようになり、日本代表からも外れるようになっていった。試合に出始めるにつれて、守田と気まずくなり食事に行く機会が減り寂しくなったことをのちに田中が明かしていたが、守田が危機感を覚えるほどの急成長を見せていたと言えるだろう。 守田が在籍した最終年となった2020年は、チームが4-3-3システムを採用。守田のアンカー、田中のインサイドハーフという共存が実に強力で、三笘薫やレアンドロ・ダミアンといった攻撃陣の破壊力も相まって、圧倒的な強さを見せてリーグと天皇杯の2冠を達成。守田の退団が発表されていた21年1月、田中は自身のインスタグラムで「攻撃も守備もできる自分の理想像でした」と守田を評し、「代表で待っててください。必ず追いつきます。」と綴っている。 あの同僚時代から4年の月日が流れようとしている。 川崎で凌ぎ合ってきたボランチコンビは、ともに戦いの舞台を海外に移し、現在も日の丸を背負っている。そしてW杯最終予選を戦いながら、再び切磋琢磨している関係が続いている。チームの心臓として君臨している守田がリードしているが、新天地のリーズ・ユナイテッドで輝きを見せている田中もまだまだ伸び盛りだ。 この2人のライバル関係から、まだまだ目が離せない。
いしかわごう / Go Ishikawa