なぜ東日本新人王決勝で衝撃の10秒TKO劇が生まれたのか…元プロの父がトレーナーを務めるフェザー級の渡邊海がMVP受賞
この日は、応援タオルを作り212人の応援団が駆け付けてくれていた。12試合24選手が出場したが、10秒決着というだけでなく会場の盛り上がりも渡邊が一番だった。金に染めた髪型に端正なマスク。スター性も抜群である。 「実力はオレの方が上」と訴えた敢闘賞の関根や、技術とKOの両方を見せて技能賞に輝いた坂間、1ラウンド28秒で終わらせたミドル級の190センチの長身ボクサー、草村龍弥(角海老宝石)らMVP候補がズラっといたが、プロのMVPと定義するのであれば、「衝撃の10秒決着」で会場を沸かせた渡邊が、ふさわしい華を“持っていた”のである。 ライオン古山のリングネームで自らも1967年に全日本ライト級新人王とMVPを獲得、スーパーライト級で世界王座に3度挑戦した経験がある73歳の古山哲夫会長は、今でも必ず2ラウンド、渡邊のミットを持つ。 「センス。自分のモノを持っている。世界に行けますよ」 渡邊の将来性にそう太鼓判を押した。 だが、父は「合格点」という言葉をぐっと飲みこんだ。 「全日本取ってからってことだよね?」 息子がそう問いかけた。 控室に帰った2人は、ネットで「日本最速KO記録」を調べたそうだ。日本最速記録は2005年7月21日に斉藤大喜(トクホン真闘)が記録した「8秒」である。目標は2月6日の全日本新人王決勝での10秒超え?! 「やりたいです。全日本で。でも、無理かな」 さわやかに第7世代の金の卵はそう言って笑った。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)