「ユニホームは戦闘服だ」野球から得たのは我慢と継続・黒田博樹さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(37)
性格はすごく慎重だし、ネガティブだと思う。ここで打たれたらとマウンドで当然考える。それを消すために、いろんな準備をする。次の登板までネガティブなことが頭によぎる中で何をするか。100%でマウンドに上がるのはシーズンを考えると難しい。どれだけ100%に近づけるか。その一つが体の準備。相手の分析、研究。そしてマウンドに上がる時に怖さを振り払うというのが自分のルーティン。打たれる怖さはあるけども、準備をすることで軽減されると思うし、それがまた闘争心に変わっていく。 ▽壁をぶち破っていくと大きくなれる 先発というのは登板日が決められているので、それに向けてしっかり調整できる。自己責任の部分が調整の中では多々ある。僕自身は登板日、緊張感は多少あるが、それを抑えつつゲーム時間から逆算をしてルーティンをこなしていく。ユニホームを着て最後のボタンを留めてからスイッチを入れるようにしていた。そこからもう自分は戦う精神で、目つきも変わったし、恐怖心を打ち消すような闘争心を持つようにしていた。アメリカでも、あれだけ体のでかいバッターと対戦するから、怖がっていたら何もできない。常に向かっていく気持ちは大事だ。ユニホームは戦闘服という気持ちで袖を通せば、いいパフォーマンスができるんじゃないかと思ってました。
野球から得たものは我慢することと継続すること。いくら自分が一生懸命投げて0点に抑えても勝てないゲームもある。相手ピッチャー、打線の兼ね合い。その中で我慢して投げ続けることが大事。気持ちを切らさずに、また次の登板に向けて調整していく。500試合余り投げてきたが、その中でどっかで投げ出したくなる時も当然あった。でも、我慢しながら続けていくのが一番僕にとっては大きかったかな。プロなんで、1、2年結果を残しただけじゃ評価されない。体のコンディションは毎年変わってくるだろうし、けがも出る。両親が病気になってメンタル的にしんどくなって、というのもある。その中でプロである以上はコンスタントに結果を出し続けるというのが評価されるところ。 好きな言葉は「雪に耐えて梅花麗し」。いい時ばかりじゃないので。順風満帆もいいのかも分からないけど、苦しいところを乗り越えてきた方が、人間的にも強くなれるんじゃないかな。野球選手としても強くなって壁をぶち破っていくと、また一回りも二回りも大きくなれる。 × × ×
黒田 博樹氏(くろだ・ひろき)大阪・上宮高―専大からドラフト2位で1997年に広島入団。2005年に最多勝、06年に最優秀防御率のタイトルを獲得した。08年に米大リーグのドジャースへ移籍し、12年からヤンキースでプレー。15年に広島復帰。名球会入り条件の日米通算200勝は16年7月に到達。25年ぶりのリーグ優勝を果たした同年限りで引退した。75年2月10日生まれの49歳。大阪府出身。