世界初は被災者のため! パン屋が造ったしっとり柔らかいパンの缶詰
防災備蓄品として広く知られるようになったパンの缶詰。カビる心配がなく、食器がいらないので、被災地でとても役立つそうです。 【写真】生のパン生地を使った「しっとり柔らかい」パンの缶詰はキャンプでも便利 「昔のパンの缶詰は不味かったけど、ある技術のおかげで激変したんです。それを町のパン屋さんが開発したというからすごい!」 そう語るのは缶詰博士の黒川氏。味を激変させたなんて、一体どんな技術なのでしょうか? ■正しいけどパサパサ 初めて食べたパンの缶詰はアメリカ製だった。甘さも香りもちゃんとあったけど、食感は最悪。パッサパサで、口の中の水分がすべて持っていかれた。 今にして思えば、焼いたパンを缶に入れ、密封して高温加熱したのだろう。というのも、そのやり方が缶詰として正しいからだ。缶ごと熱で殺菌するから缶詰は長持ちする。しかし、そのせいでパンから水分が抜けてしまったわけだ。 そんな二律背反に立ち向かったのが、栃木県那須塩原市にある町のパン屋、パン・アキモトであります。 ■世界で特許取得 パン・アキモトの社長・秋元義彦氏がパンの缶詰を開発したのは、1995年の阪神淡路大震災がきっかけだった。被災地に送ったパン(2,000食分)の半分以上が傷んでいたと聞き、 「缶詰にすれば長持ちするのでは?」と考えたのであります。 そこで研究を始めたが、最初は失敗の連続だった。焼いたパンを缶に入れ、殺菌のために再加熱すると、どうしてもパンの食感が悪くなる。そんなパンはパン屋として認められない! そこで秋元氏は発想を転換することにした。焼いたパンを使うのではなく、生のパン生地を使うとどうなるだろう? どうせ殺菌のために加熱するんだから、その熱を利用してパンを焼けばいいのでは? その試みが成功だった。他にも、パンの水分をコントロールする特殊な紙を使うなど、いくつもの工夫を重ねた結果、しっとり柔らかいパンの缶詰が缶成! その製法は日本、米国、中国、台湾の4カ国・地域で特許を取っております。 ■生地がくっつき合っている パン・アキモトのパンは、手で裂くとしっとり感が良く分かる。引っ張るとまず抵抗があり、それからゆっくりと千切れていく。適度な水分を含んでいて、生地が密にくっつき合っているからだ。 今回開けたのはストロベリー味なので、引き裂いているとその甘い香りが部屋いっぱいに広がった。ストロベリーの量が予想以上に多くて嬉しい。うーん、いい香りだ! ■パネトーネっぽい 引き裂いた一片を頬張ると、最初に感じるのはしっとりした舌触り。初めて食べる人は、これが缶入りだったとは絶対に思えないはずである。それほどしっとりしている。 外側は生地が厚くなっていて食べ応えがあり、内部は軽やかでふわふわ。全体の柔らかさといい、甘さといい、ちょっとイタリアの菓子パンのパネトーネに似ている。 そして、このおいしさが5年も持つというのも素晴らしい。 缶詰情報 パン・アキモト/PANCAN賞味期限5年シリーズ ブルーベリー味とストロベリー味 どちらも100g 参考価格500円前後 ショッピングサイトなどで入手可 ■ 缶詰博士 かんづめはかせ 昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。初のエッセイ本「缶詰だよ人生は」(本の泉社刊)も絶賛発売中! 公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。
缶詰博士