梶芽衣子「70代で殺陣に挑戦。30代半ばでは胆嚢炎になり、健康を意識。仕事をするために、ストイックな食生活も続けられる」
昔、映画『無宿』でご一緒した勝新太郎さんは、「芽衣子、歌を続けるなら役者の歌でいけよ」とおっしゃった。 勝さんの歌も、まさに役者の歌でした。「マイ・ウェイ」を好んで歌ってらしたけど、毎回歌い方が違うんです。伴奏などおかまいなしに自由に歌って、それでいて勝さんにしか表現できない説得力があって。 だから勝さんからの「役者の歌で」という言葉は、私の宝物になっています。 もちろん、女優の仕事でも挑戦は続けていますよ。Netflixで公開されている『幽☆遊☆白書』では、殺陣に取り組みました。 最初はお断りしたんです。原作のマンガを読んだら、超能力を使った闘い方を主人公に仕込む師匠・幻海の役だっていうじゃないですか。主人公役の北村匠海くんは25歳くらい。実際に戦うシーンもあるので、「なんで私なの。私の年齢をご存じですか?」って。 でも、私ならできると思ってオファーをくださったのだろうし、殺陣師の方も「任せてください」と言うし。「ならば、やってやろうじゃないの」と思っちゃうのが私なのね(笑)。ここから逃げたら明日がない、と思う性質なんです。 コロナ禍で撮影が延期となったときは、道場で稽古をつけていただきました。ある日、格闘シーンの稽古中に先生が「大丈夫ですか!」と駆け寄ってきたのでどうしたのかと思ったら、相手役のこぶしが私の顔へぶつかったように見えたんですって。 普通の人は殴られるかなり手前で避けるものらしく、「芽衣子さんは直前まで逃げない」と褒めていただきました。 いまの映像作品を製作する方は、昔の私の作品を配信などで知った若い世代なのかもしれません。だから「さそり」などのイメージでアクション映画に誘ってくれるのでしょう。「梶芽衣子って、まだそれなの?」と意地悪に見る人もいるかもしれないけれど、私は「そうよ、ずっとそれなの。でもほかにもあるのよ」と言いたい(笑)。 お母さん役も演じますし、時代劇も好きです。たとえば『きのう何食べた?』の西島秀俊さん演じる史朗さんのお母さんは、きっちりしていて、知らないことは一所懸命学ぼうと真面目で、息子に対する誇りがあって、好きな役でしたね。幅広い役をいただけることを本当に幸せだと思います。
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