お風呂で死なないための<命を守る入浴法>「高齢者はとくに注意して」と専門家
冬のお風呂で命を落とす危険な行為
冬場は「浴室での死亡」が激増する季節でもある。特に、後期高齢者の75才以上はそのリスクが高まるという。覚えておくべき入浴法を専門家に教えてもらった。 長湯は危険!1時間経っても出てこないのは危ない 国際医療福祉大学教授で温熱医学に詳しい前田眞治さんは、「“長湯”によって血圧が下がり、溺死する危険もある」と指摘する。 「寒い脱衣所では血圧が高くなっていますが、お湯につかると、水圧で胸が圧迫されて血圧は20mmHgほど下がります。たとえば、リビングでは120mmHgだった血圧が、脱衣所に入ると寒さで140mmHgに上がり、お湯に胸までつかると水圧で120mmHgまで下がる。そのまま長湯をして体が温まるほど、血管が広がってどんどん血圧が下がっていきます」 ウトウトしたら危険!すぐ上がること 血圧が下がりすぎると、脳に酸素が充分に行き届かなくなり、意識がもうろうとしてくる。その結果、湯船で溺れてしまう可能性があるという。 「湯船につかったまま亡くなる人は、もがいたあとがなく、お湯をあまり飲んでいないケースが多い。普通は鼻まで水につかると苦しくてもがき、水を飲むのですが、血圧の変動によって意識障害を起こしていると苦しくならない。ポカポカして気持ちいいからと、湯船でウトウトするのは危険サイン。リラックスしているだけなのか、脳に血液が届いていないのか、本人ではわかりません。ウトウトしかけたら上がりましょう」(前田さん) 入浴熱中症が危険!心配停止になる可能性も… 千葉科学大学危機管理学部教授で熱中症に詳しい黒木尚長さんは、長湯による「入浴熱中症」に警鐘を鳴らす。 「高温のお湯に肩まで長時間つかることで、熱中症と同じ症状が引き起こされます。お湯につかっている間は汗をかいて体温を逃がすことができないため、体温調節がききません。42℃のお湯につかると、10分で体温が約1℃上がるので、通常の体温の人が全身浴をした場合、約30分で体温が40℃を超えます。すると熱中症で意識を失うリスクが出てくる。そのまま入浴して体温が42.5℃を超えると心停止で亡くなることもあり得ます」 高齢者は特に危険…重度の熱中症に!? 若い人と比べ感覚が鈍くなっている高齢者は、のぼせている段階で気づくことができず、気づいたときには重度の熱中症になっていることも珍しくない。 「そんなことはない」と思う人は、入浴後に体温を測るとその高さに驚くはずだ。また、寒い冬はお湯の温度を2℃程度高くして、長めに湯につかる人が増えるため熱中症が起こりやすい。黒木さんの調査によれば、入浴中に体調を崩した高齢者のうち、8割以上が熱中症かその疑いがあるという。「体にいいから」と長時間湯船につかることは、反対に、多大な負担をかける恐れがある。 入浴は毎日の習慣だからこそ、細心の注意が必要だ。