【スラムダンクの“聖地”で迷惑行為多発】突然の観光地化によるオーバーツーリズム対応、失敗例と成功例
日本でも学ぶべき成功事例
問題事例を先に紹介したが、上手く受け入れている事例もある。例えば、佐賀県の祐徳稲荷神社はタイの映画・ドラマのロケ地になったことでタイからの観光客が急増したことを受けて、タイ語の案内やお守り・おみくじを用意して対応している。 また映画「君の名は」で聖地化した飛騨市図書館は下記のような観光客向けの案内を出して対応した。 聖地巡礼者の皆様へ ご来館いただきありがとうございます。 飛騨古川へようこそ。 飛騨市がモデルとなっている新海誠監督の新作映画『君の名は。』には、当館にそっくりな図書館も登場します。 館内で写真撮影をされる際は、事前にカウンターにて許可申請を行って下さい。 また、他の利用者様のお顔が識別できるような写真を撮ることはご遠慮ください。 この他にも、市民の方のご利用の妨げにならないよう、充分ご配慮下さい。 SNSに写真を投稿する際は、「飛騨市図書館きたよ」と是非とも記載して下さい。 「飛騨図書館」「飛騨市立図書館」などの誤りにお気をつけください。 ちなみに飛騨市図書館はツイッターとフェイスブックをやってますのでフォローしてください。 ご協力ありがとうございます。 飛騨市図書館
平素から対策イメージを
もともと著名な観光地ではないのに、急に観光客が来るようになった地域・スポットは、観光客を受け入れるインフラが未整備で、地域住民の心理的な受容力も必ずしも高くない場合が多い。そして、たいていの場合は、だれ(どの組織)が責任をもって観光観客対応における地域の管理を行うかが不明確である。ゆえに冒頭でお伝えしたように、事前にシミュレーションをしておいていただきたい。 具体的には、前稿「今話題のオーバーツーリズム その定義と課題、対策とは」で示したオーバーツーリズムのパターン「キャパが広くアクセスが良い」「キャパが広めでアクセスが良くない」「キャパが狭くアクセスが良い」「キャパが狭くアクセスが良くない」に自分の地域・スポットをあえて当てはめてみて、どのような対処方法があるかを脳内シュミレーションしてほしい。考えておくだけでも実際に起こったときの対応は変わってくる。 地域の行政、観光協会、DMO等も地域にある場所が突然上記のようなオーバーツーリズムに直面したらどのような対応策をすべきかを想定し、対応プロセスを考えておいてもらいたい。状況が悪化して、地域住民感情が拗れるほど対応が難しくなるので、早めに手を打ち始めることが重要である。
池上重輔