【スラムダンクの“聖地”で迷惑行為多発】突然の観光地化によるオーバーツーリズム対応、失敗例と成功例
世界的な「スラムダンクブーム」で起きた摩擦
元々観光地として想定していなかった地域になんらかのきっかけで観光客が急増する事例は世界各地で増えてきている。日本では、1993年に放送開始されたTVアニメ「スラムダンク(SLAM DUNK)」のオープニング映像のモデルとして知られる江ノ電の鎌倉高校前駅を降りた西側にある「鎌倉高校前1号踏切」がその一例であろう。まずはこの事例で、どのように観光地として想定していない場所でオーバーツーリズムが起こるかを紹介する。 SLAM DUNKは海外でも放送され、この踏切はGoogle Mapにも「スラムダンク踏切」として掲載され、SNSでも容易に検索が可能である。2017~18年ごろから外国人観光客を中心に人が集まり出していた。 22年12月に映画版「THE FIRST SLAM DUNK」が公開され、韓国、台湾、中国などでも封切りとなり、ブームが再燃。想定を超えた観光客が近隣住民にストレスを与えている。 踏切周辺は平日の日中でも70~80人、多い時で100人以上の人だかりができる。事故防止のため江ノ島電鉄と市が手配した警備員がいるのだが、インスタグラムに投稿する写真を撮るために警備員の制止を振り切って車道に飛び出す観光客がいる。 神奈川県警鎌倉署によると、踏切関連のトラブルによる通報・相談件数は昨年1年間に18件だったが、23年は6月末時点で47件、6月だけでも19件へと激増した。中には民家の庭へ侵入するなど、迷惑行為では済まされない事件も発生しているという。地元の鎌倉市は9月から、従来は土日や大型連休に限っていた交通誘導員を平日にも配置し始めた。 江ノ島-鎌倉の一帯は、江ノ電の親会社である小田急電鉄の施策によって「外国人観光客に長期滞在を勧めるエリア」としており、インバウンド専用の割引周遊券「箱根鎌倉パス」を発売していた。鎌倉高校前駅周辺は住宅街であり、観光関連事業者である小田急電鉄の施策の影響を住民が受けている面もあろう。 警備員が常駐する山手側だけでなく、海側を走る国道134号(片側1車線)で観光バスが路上駐車してツアー客を降ろそうとするなど、新たな悩みが発生しているようだ。