【スラムダンクの“聖地”で迷惑行為多発】突然の観光地化によるオーバーツーリズム対応、失敗例と成功例
対策を怠れば、観光資源を失う結果に
元々観光地として想定してなかった地域では地域住民が有効な対応策を持てない場合もあり、時にはその観光資源自体をなくすことで解決を図るという悲しい事象も起こり得る。そうした事例の一つに北海道美瑛町南部を走るパノラマロード沿いに、1本だけ立っていたイタリアポプラの木がある。 地面に対して首をかしげるように傾いて立つ姿から「哲学の木」と呼ばれ、写真撮影の名所として知られていた。この木は農家が所有しており、周辺には農作物を育てている畑であった。 立ち入り禁止の標識があるにも関わらず、無断で畑に侵入して撮影する観光客が後を絶たず、停めてあるトラクターに乗り込むなど、マナー違反が相次いでいた。農作業に支障が出る行為が頻発し、「美瑛まで来てくれるんだから、楽しみを奪っちゃかわいそうだな」と思っていた農家の我慢も限界を超え、2016年2月にその哲学の木を切り倒した。 北海道の木に関係する事例では、10年ほど前にJALのCMで使われた北海道上富良野町の私有地に立つ5本のカラマツもある。CM中にタレントの相葉雅紀氏が「嵐の木って呼んでいいかな」と話したこともあり巡礼を行うファンが殺到した。私有地に立ち入り撮影を行うファンが後を絶たず、ゴミのポイ捨てや違法駐車などの問題も発生。激怒した木の所有者が被写体としての価値を下げるために新たに木を2本植えて、7本の木にしてしまった。 もともと人気のある地域がランキングに掲載されるなど注目され、観光客が集中するパターンもある。東京都渋谷区の中でも代々木公園近くの富ヶ谷は落ち着いた住宅街で、おしゃれなカフェやスタイリッシュなショップ、モダンなレストランが並んでおり、外国人観光客の人気が高まっていた。地域住民はレストランの予約が取りにくくなるなど混雑を感じ始めていた。 その中で、23年10月にグローバルメディアのタイムアウト(英国)が全世界対象の大規模な都市調査と各国エディターの情報をもとに行った「The 40 coolest neighbourhoods in the world(世界で最もクールな地域)」と題したランキングで、富ヶ谷がトップ10に選出された。今後一層のインバウンド客が押し寄せる可能性が高い。