【スラムダンクの“聖地”で迷惑行為多発】突然の観光地化によるオーバーツーリズム対応、失敗例と成功例
思わぬオーバーツーリズムが起きる現代的な要因
意図的なプロモーションを行っていない地域やスポットに突然観光客が押し寄せる背景は大別して2つある。一つはSNS等のコミュニケーション技術・ナビゲーション技術の発達と観光客の発信力増加が挙げられる。 例えばYuenらの調査では、SNSの情報が観光地域づくり法人(DMO)やマスメディアなど伝統的な情報源より信頼度が高くなっていることを指摘している。SNSの中では、友人や親戚からの一方的な発言に比べ、Mafengwoのような第三者の観光コミュニティでの情報がより包括的で信頼性が高い。 さらには、ナビゲーション技術の発達によって以前は、行きたいと思っていてもいけなかった地域や場所に比較的容易に到達できるようになった。こうした技術の発達によって一般の観光客が簡単に自分の体験を発信できるようになった。インスタグラム、YOUTUBE、TikTokなどさまざまな媒体を活用して体験が発信されている。 二つ目の背景として、観光資源と観光目的の多様化・細分化がある。伝統的に観光は風光明媚な景勝地、伝統的で由緒ある建築物や施設、貴重な収蔵品を持つ美術館や博物館、特別な行事やイベントなどを見聞きすることが主な目的であった。 昨今は住民にとってはごく普通の風景、日々の生活、地域の行事等が観光資源化し、そうした地域の日常を見分し体験する旅の人気も高まってきている。観光目的として特定のコンテンツの世界観を体験したいというのは以前もあり、例えばビートルズが『アビイ・ロード』のジャケット写真に使用したセント・ジョンズ・ウッド界隈にあるグローブ・エンド通りとアビー通りの交差点に位置している横断歩道を目指すのは英国旅行客の定番の一つだった。それが今では細分化し、地域住民がよく知らないようなマニアックな聖地巡礼が出てきている。
マニアといえば、その収集意欲が観光目的になる場合もある。筆者のMBAゼミ生に教わったのだが、ダムマニアのためにダムカードというものがありそれを収集するため旅をする人もいるという。ダムカードは全国に公式が670ヵ所、非公式が160カ所以上あり、バージョン違いや限定品を含めると1000種類を超す。