【選手権コラム】初出場校の快進撃。「野球でも柔道でもなく、サッカーの」東海大相模が国立へ
第103全国高校サッカー選手権の準々決勝が1月4日に各地で行われた。Uvanceとどろきスタジアムでは初出場の東海大相模高校(神奈川)が2度目の8強入りとなった明秀日立高校(茨城)と対戦。先制を許す苦しい流れとなるも、持ち前のテクニカルなサッカーを貫いて逆転勝ち。初出場にして、初の国立を掴み取った。 第103回全国高校サッカー選手権大会 試合日程・放送予定・キックオフ時間 取材・文=川端暁彦
「誰も信じてくれないと思う」ところから国立へ
東海大相模を率いる有馬信二監督は試合後、いつもどおりの豪放磊落な雰囲気で取材に応じ、こう言って笑顔を浮かべた。 「(14年前の赴任当時)東海大相模が国立へ行くなんて言っても、誰も信じてくれないと思います。(東海大相模と言えば)野球と柔道じゃないですか」 スポーツ強豪校として名を知られる東海大相模だが、サッカーの世界では全国レベルの強豪ひしめく激戦区の神奈川県でなかなか存在感を出し切れていなかった。 そこに系列校である福岡の東海大学第五高校で長く指導者として活動していた有馬監督が招かれ、サッカー部を強化し直していく取り組みが始まった。福岡出身だが、家族と揃って移住し、骨を埋める覚悟で情熱を注いできた。 就任当初から国立は「夢」と思っていたと言うものの、その距離はかなり遠く感じていたそうである。 「就任2年目には、(当時の選手たちを)国立の決勝へ連れて行ったんです。でも彼らはお菓子を食べて、ジュース飲んでいるだけだった」 具体的に“国立”を目標として捉える雰囲気が最初から部にあったわけではなかった。 東海大五は福岡を代表する強豪校であり、コーチとして“国立”も経験していた有馬監督だが、文化も違う新しい場では思わぬ苦労も経験した。 夏の全国高校総体で好結果を出し、「さあ選手権」と意気込んでも、野球部を始めとするほとんどの部活は夏で活動を終えており、教室の雰囲気も一気に弛緩する。秋には修学旅行などの学校行事も詰め込まれており、進路も定まった中で戦う選手権予選は難しさも痛感させられてきた。 2017年、2019年、2021年と夏の全国高校総体に出場を果たしているものの、いずれの年も選手権では結果が出ずに予選敗退。ただ、神奈川県内での存在感が増す中で、テクニカルなパスサッカーは神奈川の中学生からの人気は高く、進路に選ぶ選手は確実に増加していた。 山口竜弥(徳島)や中山陸(甲府)などJリーガーも輩出し、育成面での成果も少しずつ積み上がってきており、種は芽吹きつつあった。