サイレン鳴るたび夜間避難、テルアビブ住民眠らせぬフーシ派戦術
(ブルームバーグ): イエメンの親イラン武装組織フーシ派はイスラエルへの全面的な報復攻撃を避けつつ、ゆっくりと攻撃の手を強めている。
2023年10月に紛争が始まって以来、イスラム組織ハマスはガザでの戦力を大きく失い窮地に追い込まれている。レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは、公式に停戦が発効している。イスラエルを砲撃しているイラン寄りの武装組織は、今ではフーシ派だけとなった。ただ2000キロメートルのはるかかなたからの攻撃だ。
フーシ派からの攻撃はこの1週間、夜間のものがほとんどだ。イスラエル人はこれを、戦闘を限定的にしながらも住民を疲弊させる戦術だとみている。
「フーシ派によるエスカレーション管理を目の当たりにしている」と、イスラエル防空システムの設計者であり、国防省のベテラン顧問であるウジ・ルービン氏は話す。「われわれがサヌアを攻撃したから連中はテルアビブを攻撃すると言っているが、民間人に大きな犠牲を出す用意はまだないようだ。夜明け前の攻撃は人々が出歩いていないことを意味する」と述べた。
このバランスを維持するのは難しいかもしれない。この一週間にテルアビブに撃ち込まれた弾道ミサイル「パレスチナ2」4発のうち、イスラエルは3発を迎撃できたとしているが、1発は人気のない運動場に着弾し爆発。住宅の窓ガラスが破壊され、3人が負傷した。
数十万人ものテルアビブ住民にとっては恐らく、就眠中にサイレンが鳴り響くたびにシェルターに駆け込まなくてはいけない事実の方が、一層深刻な問題かもしれない。避難するのは直接的な被弾だけでなく、上空で迎撃されたミサイルの破片が大量に降り注いでくる危険があるからだ。夜間攻撃でミサイル弾頭の一部が着弾したために、取り壊された学校の建物もある。
イスラエル側はそれまでの攻撃の報復として、フーシ派の重要な資金源であり物資調達拠点でもあるイエメン西部ホデイダ港を2度爆撃している。先週には首都サヌアのフーシ派拠点を空爆、指導者の暗殺も示唆した。米英もフーシ派攻撃に加わっている。