「KOは辰吉家の美学」当日券200枚を残して前売り完売の異様な盛り上がり…タイトル初挑戦の辰吉ジュニアは井上尚弥所属ジムの東洋太平洋王者に勝てるのか?
今回も帝拳への出稽古で日本バンタム級王者の増田陸(帝拳)、大阪では15日に防衛戦を控えるIBF世界バンタム級王者の西田凌佑(六島)という内外トップクラスのサウスポーとスパーリングで拳を交えた。総ラウンド数は80を超え、吉井会長は「西田とのポイントアウト勝負だと、さすがにやられたけれど、打ち合いの展開に持ち込んだときは互角に戦えていた」という。 中嶋が入り際に繰り出してくるアッパーやフックをうまく外して打撃戦に持ち込めるかどうか。距離が詰まっての殴り合いになれば、一発で倒す威力を秘めた辰吉の左フック、右ストレートが火を噴く。 「試合の中で何回その場面を作れるか」と吉井会長も言う。 中嶋は出入りのボクシングをするタイプではない。プレスを受けると手が出なくなるという悪いクセもある。辰吉にすれば、右のリードのパンチを封じ込めることも勝利へのポイントとなるだろう。 「12ラウンドを戦うつもりはないが、戦える体は作ってきた」 辰吉にも自負がある。 ただ辰吉には、父同様ディフェンスに課題がある。不用意に正面に立ちパンチをもらう粗さがあり、サウスポーに対してはその傾向が顕著だ。 辰吉が勝つ可能性は十分にあるが、大方の下馬評通りにひとつのミスで「やられるリスク」も兼ね備えた戦いになるというのが「辰吉ジュニアは勝てるのか?」という表題に対する結論。 父は1990年9月にここ後楽園で、プロ4戦目で日本バンタム級王者の岡部繁(セキ)に挑戦し、4ラウンドに左フックから右ストレートのコンビネーションを決め、計3度のダウンを奪うという衝撃のKO勝利でベルトを腰に巻いた。次男の寿以輝は、プロ18戦目、デビューから9年8か月の歳月を経て、ここにたどり着いた。 「親父は社会人の経験があってB級デビューだったからね。当時はSNSもなく辰吉がどんなボクサーかがよくわからず『関西では凄い人気らしいが、まだ4戦目で評判だけだろう』と挑戦を受けてもらえた。先代(父の故・吉井清会長)が交渉でうまく相手陣営をだましたんだと思う(笑)。寿以輝はアマ経験もないし元々時間はかかると思っていた。そこに怪我などもあったしね。こっちも大事に試合を組んできた。比べるのはかわいそう。ようやくここからですよ。親父のDNAが花開きますよ」 34年前の試合でもセコンドについた吉井会長がそう説明した。 中嶋陣営の“親分”大橋秀行会長も「辰吉夫妻には、30年前のジム開きにも、私の結婚式にも来てもらった。それが今、息子さんとのマッチメイクをさせてもらうことになるとはね。試合が決まって電話でも話した。人生の不思議な縁を感じるし、感慨深いものもある。中嶋にももちろん、辰吉にもチャンスがあると思う。いずれにしろKOで決まるでしょう」という話をした。 前売りチケットは、世界戦でもないのに「チケットぴあ」の販売が大きく動いて、ほぼソールドアウト。当日券は200枚だけ用意してあるが、「瞬間で売り切れるだろうね」と、大橋会長は予想している。 大阪からは約200人の辰吉応援団が駆けつける予定。そして“レジェンド”辰吉丈一郎も、るみ夫人らと共にリングサイドから息子の晴れ舞台を見守る。 (文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)
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