厚生年金「会社が保険料を折半」「将来の年金額アップ」の2つのメリット 月収10万円で40年勤務、そのうち10年だけ加入でも生涯収支185万円プラス
わずか5年で「老後資金2000万円問題」が「4000万円」に膨れ上がった。公的年金も実質的な減額が続き、止まらない値上げがそこに追い打ちをかける……危機的状況を回避するためには、保険料を支払ってなお、あり余るメリットがある「厚生年金」への加入を検討するべきではないか。【前後編の後編。前編から読む】 【表】10年間の厚生年金加入で「払う保険料」「受け取れる年金額」を年収別に比較
月1万円を10年で「2040万円」→「2204万円」に
厚生年金には、「会社が保険料の半分を負担してくれること」と、「将来受け取れる年金額が増えること」というメリットがある。これは、厚生年金保険料を払う負担を大きく上回るのだ。具体的に試算してみよう。 例えば、月収10万円の場合、厚生年金の保険料1万9032円のうち、自己負担額は半分の9516円。国民年金保険料の1万6980円よりも7000円近く安く済む。安い保険料で、より大きな金額を受け取れるようになるのだ。社会保険労務士の拝野洋子さんが言う。 「国民年金だけに加入している場合、40年間で合計815万円の保険料を支払うことになります。65才から90才までの25年間年金を受け取るとすると、受け取れる総額は2040万円です。 一方、40年のうち10年間だけ厚生年金に入るとすると、支払う保険料は合計794万円に減り、25年間で受け取る年金額は2204万円に増えるのです」 減った支払いと増えた受給額を合わせると185万円にもなる。10年間厚生年金に入るだけで老後のお金にこれだけの差がつくのだ。社会保険労務士の井戸美枝さんが解説する。 「10年間加入すると、毎月約1万円の保険料で、将来の年金が約5万8000円増やせる。65才から受給開始と仮定した場合、保険料と年金額を比較すると、加入者の年収額にかかわらず、82才を過ぎれば厚生年金保険料の“元が取れる”計算になります」(井戸さん・以下同)
健康保険への加入で医療費の保障も手厚くなる
厚生年金に加入するメリットはほかにもある。加入すれば会社の健康保険にも入るので、働けなくなったときの傷病手当金や出産手当金なども受け取れるようになり、保障が手厚くなる。 「例えば医療費の自己負担の上限額が決まる高額療養費制度も、妻が健康保険の扶養だと収入が高い夫の上限額が適用されますが、本人が健康保険に入っていて年収が370万円以下なら、5万7600円で済みます。 障害年金の給付も手厚くなるため、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受け取れるようになり、2級だと81万6000円にもなる。これは寝たきりになるような重度の障害でなくとも、手術で臓器を摘出したり、精神疾患にかかったりすることでも対象になる可能性があります。現在は20才から24才まででも約11万人と、東京都の20才人口と同じくらいの数の人が受け取っています」 また、雇用保険からは教育訓練給付金も10月から給付率が80%に上がる。非常に手厚くなるので、民間の保険への加入は社会保障の給付内容を確認してからでも充分だ。 厚生年金に加入していれば「iDeCo(個人型確定拠出年金)」をお得に使うこともできる。 「国民年金加入者は60才までしかiDeCoに加入できませんが、厚生年金加入者なら65才まで加入できる。給与から毎月2万3000円を拠出すればその掛金が全額所得控除されるので、効果的に節税できます」