厚生年金「会社が保険料を折半」「将来の年金額アップ」の2つのメリット 月収10万円で40年勤務、そのうち10年だけ加入でも生涯収支185万円プラス
繰り下げた年齢から12年長生きすれば元が取れる
さらに、受給開始を遅らせて受給額を増やす「繰り下げ」などのテクニックも、厚生年金に加入すれば考える必要はなくなる。 「厚生年金の受給を繰り下げても、働いている間は保険料を払い続けることになるので、繰り上げと繰り下げのどちらが得かは個人の収入や家計、寿命次第です。1つ言えることは、厚生年金は繰り下げた年齢から12年長生きすれば、遅らせた分の元を取ることができます」(拝野さん) 例えば受給開始を1年遅らせて66才にすると、78才まで生きればいいということ。ただし、それまで第3号被保険者だった人が厚生年金に加入すると、基礎年金に上乗せされていた「振替加算(昭和41年4月1日以前生まれの人のみ)」がなくなることがあるため、その際は厚生年金だけを繰り下げよう。拝野さんによれば、厚生年金の加入要件が緩和された一方で、遺族年金を縮小しようという動きが進んでいるという。 「だからこそ、いま第3号の人も、可能な限り厚生年金に加入して、自分のための年金をつくって備えておくことが大切なのです」(拝野さん) 前述の従業員数などの要件に加え、現在は農業、林業、飲食店、理容店、神社などは「非適用業種」となっており、厚生年金に加入することはできない。だが、今後も継続した適用範囲の見直しが求められるため、いずれ緩和される可能性もある。加入への心構えは持っておいて損はない。
加入するために転職も“アリ”
もっとも、厚生年金は要件を満たせば“強制加入”となるため、個人がすべき手続きはない。 「会社側が資格取得の手続きをすれば、保険料は毎月の給与から自動的に天引きされます。加入しているかどうかは、給与明細に『厚生年金』の欄があるか確認すればいい。要件に該当しているのに手続きがされていないのは法律違反なので、まずは会社に確認し、対応してくれなければ年金事務所などに相談してください」(井戸さん) 厚生労働省の社会保障審議会年金部会で委員を務める慶應義塾大学商学部教授の権丈(けんじょう)善一さんは「厚生年金に入れる仕事に転職するのも1つの手」と話す。 「いずれ撤廃される見込みとはいえ、いまの仕事が非適用業種だったり、規模要件外だったり、加入するまでに時間がかかりそうであれば転職するのも悪くないでしょう。いまは人手不足なので、厚生年金完備のより条件のいい仕事に就ける可能性も少なくありません。 “年収の壁”を気にして第3号でいるよりも、事業主が保険料を半分払ってくれてお得な厚生年金に加入できる働き方をした方が、老後資産だけでなく、生涯収入も圧倒的に増やせるのです」(権丈さん) なくならない老後のお金の不安──だが、制度をフル活用すれば活路が開けるはずだ。 ■前編:〈【厚生年金の加入要件緩和へ】「結婚後も継続就労」か「退職して第3号被保険者に」で生涯収入に2億円の差 そのうち“厚生年金効果”は3000万円〉を読む ※女性セブン2024年7月11・18日号