住友商事がスーパー「サミット」に情熱を注ぐ意図、一方で丸紅はひっそりスーパーから撤退
資源バブルの終了に、トランプ大統領の再登板――。総合商社を取り巻く外部環境が大きく変わろうとしている。『週刊東洋経済』12月7日号の第1特集は「商社 迫られる転換」だ。大手5社はどんな勝ち残り策を描いているのか。各社のトップインタビューに加えて、注目事業の最前線をリポートする。 「売却を完了──」。丸紅は、ひっそりと食品スーパーの経営事業から撤退していた。 今年5月の決算補足資料の欄外に記された一文によれば、手放したのはユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)。「マルエツ」「カスミ」などを有する業界最大手の一角だ。
丸紅がスーパー業界で大きな存在感を放っていた約20年前には、危機に陥ったダイエーの支援に乗り出し、東武ストアや相鉄ローゼンといった私鉄系スーパーにも出資した。 しかし、それらを相次いで手放し、USMHはスーパー事業で最後に残った出資先だった。 コンビニやドラッグストア、ECなどの業界との競争が激化している。「こうした中で、マジョリティー(経営権)を持たない食品スーパーの成長を描くことが難しくなった」と食品事業部・広瀬真介部長代理は言う。今後は「戦略パートナーシップ」を結んだイオンと協業し、食品卸やPB商品に加え、電力やヘルスケアなどの分野での側面支援に注力する。
■情緒と機能を追求 一方、食品スーパーにさらに注力しようとしているのが「サミット」を完全子会社に有する住友商事だ。サミットは都内を中心に首都圏で124店を展開する。 「奇をてらった商品を置いてもダメ。『何て私の気持ちをわかってくれているんだ』と思ってもらう品ぞろえが来店につながる」と語るのは、サミット前社長(現会長)で、住友商事リテイルSBU長の竹野浩樹・執行役員だ。 こうした顧客の気持ちを高める売り場づくりを「情緒的価値」として経営の重点に掲げてきた。
例えば、サミットの店舗にいる案内係は井戸端会議のように来店客と会話するという。 「手書きのポップなども工夫を凝らしている。よい商品を置けば売れるわけではなく、伝え方が大事」(竹野氏) 情緒的価値と並んで重視するのが「機能的価値」である。その柱となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)やデータ活用だ。 住友商事からの出向者を中心に組成されたDX専門チームを軸に、キャッシュレス決済やセルフレジの導入を進めてきた。AI(人工知能)による効率化も、住友商事とサミットが一体となって取り組む。