「ホーン奏者のように演奏する」ギタリスト登場が、新しいジャズを連れてきた
初期のジャズにおいては、ギターが主役でアドリブやソロを演奏することはなく、コード弾きによる伴奏が主流でした。しかし、ジャズ・ギターを「ホーン奏者のように、ギターを弾く」若者の登場で、ジャズ・ギターが主役になる時代がやってきたのです。ジャズ・ギターの開祖と崇められるその若者とは? そして、ジャズの新しい幕開けとは? ジャズ評論家の青木和富さんが解説します。
進化し続ける楽器「ギター」
ギターという楽器は、不思議な楽器である。何が不思議かというと、他の楽器がほとんど進化を止めているのに、ギターは、例外的に今も刻々と進化を遂げ、おそらくこれからも進化し続ける楽器に違いない。電子楽器も次々と新しくなっているが、この進化の中核は電子技術で、ギターは、その電子技術も含みながら、音響的な工夫や操作性の向上、さらには演奏者の個人的なデザイン嗜好まで反映させ、様々なバリエーションが、ほぼ無限に拡張可能な、もはや万能な新楽器と言っていいようだ。もともと起源が曖昧で様々な音楽に対応した固有種のようなギターが存在するが、こうした爆発的な進化の起点は、やはりギターがマイク、アンプ、スピーカーといった電気機器とつながったことだろう。20世紀のポピュラー音楽の発展には、レコード、ラジオ、電気拡声装置の発明が欠かせないと書いたことがあったが、ギターにマイクがついたエレクトリック・ギターの発明は、ある意味その革新性を見事に体現した新楽器と言えるかもしれない。 好奇心旺盛な人間は、いつの時代にもいるもので、電気機器が発明、進化していった時代に、ギターにマイクをつけてみようと試みた人が当然たくさんいたようだ。生まれた楽器は様々で、この当時にすでにハワイアン・ギターも生まれている。むろん、これはこれで画期的な発明だが、サウンド的に使い方が極めて限られた新楽器だった。とはいえ、こうした新しい電気サウンドは、大なり小なり違和感を引き起こすもので、こうした新しい楽器には、やはり、その魅力を引き出す演奏家が重要になってくる。