「ホーン奏者のように演奏する」ギタリスト登場が、新しいジャズを連れてきた
衝撃デビューから一夜にして人気のソロイストに そしてあっけない終焉
この衝撃的なデビューで、クリスチャンは一夜にしてグッドマン・グループの人気ソロイストになり、その後たくさんの演奏が録音されるのだが、しかし、このギタリストの最期もまた実にあっけないものだった。この3年後にチャーリー・クリスチャンは、結核で25歳の若さで他界するのである。クリスチャンの結核は、すでにデビュー翌年に分かっていたようで、ハモンドも摂生するように注意していたそうだが、こうした周囲の心配は当人には届かなかったようだ。最後までマリファナに耽溺し、女性関係も盛んだった。 そして、演奏することにも耽溺していたと言えるかもしれない。グッドマンとの仕事を終えると、深夜のクラブに現れ、ジャム・セッションを楽しんでいたことは有名で、それをジェリー・ニューマンという学生が録音している。そして、この記録こそ、数年後にジャズの世界に大混乱を引き起こす「ビ・バップ革命」の夜明け前の記録として、後世に語り継がれるものとなった。クリスチャンの演奏は、グッドマンとの演奏より明らかに過熱していて、時代は確実に変わりつつあることがこのアルバム『ミントン・ハウスのチャーリー・クリスチャン』から伝わる。登場するセロニアス・モンク、ディジー・ガレスピーは、後にビ・バップ・ジャズのピアノ、トランペットの立役者であり、共にクリスチャンの1歳下の23歳の若者たちであった。いよいよジャズは、モダン・ジャズの世界へと踏み込んでいく。 (文・青木和富)