長内那由多の「2024年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 リミテッドシリーズに傑作が揃う
8. 『シュガー』
“LAを舞台に私立探偵が失踪事件を調査する”というプロットだけで嬉しくなってしまう人は、後は何も知らずに見るように。2024年、キャリアの新たな頂点に立ったコリン・ファレルは、映画(とTVドラマ)をこよなく愛する人情派探偵シュガーをとびきりチャーミングに演じた。最終回を迎える頃には、世界を見るあなたの“目”が変わっているかもしれない。
7. 『シンパサイザー』
ピークTVが終わっても、テレビシリーズは映画作家にとって重要なプラットフォームの1つだ。韓国の名匠パク・チャヌクはいよいよ流麗を極め、ここではベトナム戦争後、アメリカに潜伏した二重スパイを引き裂く。アジア人蔑視の邪悪な白人男性を1人4役で演じるロバート・ダウニーJr.(エグゼクティブプロデューサーも務める)の天才に、オスカー像の受け取り方でケチを付けた人々は平伏してほしい。
6. 『エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~』
精力的という言葉はニコール・キッドマンのためにある(2024年は映画3本、TVドラマ3本に出演)。エグゼクティブプロデューサーを兼任する本作に『フェアウェル』の俊英ルル・ワンを招き、全編香港ロケに挑んだ。幼い息子の失踪に打ちひしがれる物語は、1時間40分に及ぶ第6話でロバート・アルトマンを思わせる巨大群像劇に到達。香港の異邦人を通し孤独を謳った詩的な作品。
5. 『リプリー』
『太陽がいっぱい』をはじめ、これまで幾度となく映像化されてきたパトリシア・ハイスミス原作『リプリー』シリーズ。監督、脚本スティーヴン・ザイリアンと撮影ロバート・エルスウィットは全話極上のモノクロームで撮り上げ、劇中リプリーが心酔するカラヴァッジョの絵画と並び立った。アンドリュー・スコット演じるリプリーはまるで他人の発言をリポストし、自分のタイムラインに並べるかのように殺人を繰り返す。
4. 『SHOGUN 将軍』
月額990円にたじろいでまだ観ていないのか? 偉大なる真田広之が心血を注いだ全10話の大作歴史ドラマがあれば、考証も演出プランもない凡百の時代劇に時間を費やすこともない。1600年、関ヶ原の戦い前夜に描かれる忠義、切腹、地震が現在(いま)の日本を映していることにも驚かされる。