健全財政と景気浮揚に金利まで…しっかりともつれ合う韓国経済
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が「健全財政」と「景気浮揚の間で深い苦悶に陥った中で、金利政策までもつれる局面だ。韓国経済がトリプルジレンマに置かれたという分析が出ている。国会で予算審査が進行される渦中に「追加補正予算ハプニング」まで広がるなど混乱する姿が演出されている。 韓国企画財政部によると、尹政権の基本的な経済哲学は健全財政だ。国会に提出した来年度予算案の支出増加率は3.2%で、総支出概念が導入された2005年以降過去4番目に低い水準に抑制し緊縮ペダルを踏んだ。 だがこの過程で景気回復に向けた呼び水である「財政」の役割が不十分だったという批判が出ている。実際に内需回復の兆しは簡単に見られなくなっている。7-9月期の小売り販売(消費)は前年同期比1.9%減少し、10四半期連続で減少傾向が続いた。20代以下の賃金雇用は4-6月期基準で前年比13万4000人減り、2017年の関連統計作成開始後で最大の減少幅を記録した。建設業雇用も建設景気悪化で3万1000人減り3四半期連続で減った。 韓国経済を支えた輸出も不確実性が大きくなっている。韓国銀行によると7-9月期の輸出は前四半期比0.4%減少し1年9カ月ぶりにマイナスを記録した。ベース効果が消えトランプ氏再執権で保護貿易主義が強化されれば輸出への打撃はさらに大きくなる見通しだ。対外経済政策研究院は最近報告書を通じ、第2次トランプ政権で韓国に20%の普遍関税を課す場合、対米輸出額が304億ドル(約4兆6865億円)減少すると試算した。 それでも景気浮揚のために財政を拡大すれば国の借金が急増する懸念が大きい。企画財政部が発表した国家財政運用計画によると、来年の国内総生産(GDP)比の赤字の割合は2.9%で、緊縮財政を標ぼうしたのに財政準則限度の3%に近い水準だ。国の債務比率は2028年には50%を超えると予想した。もし追加補正予算が現実化されるならば赤字国債発行は避けられないだけに国の借金は雪だるま式に増えるものとみられる。どうにか抑え込んだ物価と不動産を刺激する可能性も大きい。 これに対し企画財政部も「来年の追加補正予算編成は検討していない」として確実に線を引いている。予算審査が大詰めの段階で追加補正予算が議論されること自体が異例の上に、健全財政基調を一言で変えるのは難しい状況であるためだ。初めて追加補正予算論に燃料を投じて火を付けた大統領室も22日に「必要な場合、財政の役割をしなければならないという一般論的言及だった」と一歩退いた。 財政政策が進退両難に陥った中で通貨政策手段である金利すらも方向性がはっきりしない。景気浮揚に向けては持続的な金利引き下げが必要な時点だが、これもやはり物価と不動産を刺激する恐れがあり容易ではない。ここに1400ウォンを挟んで推移する為替相場も新たな変数に加わり計算が複雑になっている。韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も最近「金利決定で為替相場も考慮事項になった」と言及した。 金融圏では28日に開かれる今年最後の金融通貨委員会で「金利据え置き」の決定がされるだろうという見通しが優勢だ。ただ成長率が大きく鈍化するならば年内の追加利下げは避けられないという見方も出ている。 延世(ヨンセ)大学経済学部のキム・ジョンシク名誉教授は「企画財政部と韓国銀行など経済チーム間の行き違いが大きいため今回の追加補正予算議論のように国民に混乱だけ与えている。高金利状況では財政を緩和して金利引き下げ時期になれば再び引き締めるなど『運用の妙』を生かして政策を広げるべきなのに、互いに協力できずそれぞれ引き締めるばかりなので複雑になる」と指摘した。