1杯500万円のカニも...ブランド力で牽引する石川の漁業、復興と成長産業化への道 #知り続ける能登 #災害に備える
── 「いしかわ四季のさかなPR推進協議会」の活動にも影響はありますか 若松さん 能登半島地震以降止まっていたPR活動を徐々に再開する中で、復興を視野に入れた方向転換を考えてきました。これまでは首都圏でのイベントが中心でしたが、これからは地元の人たちにもっと石川県産の魚を食べてもらうことも大事だと考えています。さらに、地元の飲食店や旅館など、食を提供する場と連携することも考えています。食べてみたいと思われるブランドを作りながら、地元でそれらを活用してもらい、観光客や宿泊客を呼び込むことで地域全体を元気にしたいんです。魚を扱う小売業者や仲買人、宿泊業者、物流に携わる方々、さらには観光関連事業者など、水産業に関わる多くの産業が一緒になって儲かる仕組みをつくることが、復興への道だと思っています。県全域での相乗効果を生み出し、関連産業や地域社会全体に良い影響が広がるような新たな取り組みを、東日本信漁連を通じて紹介していただいたアドバイザーに相談しながら、今まさに練っているところです。 島田さん 震災復興は決して一過性の特需で終わらせてはいけないと考えています。これまではとにかく戻すことが大事だとされる局面もありましたが、実際のところ、もともと私たちは 「地元の魚を地元で胸を張ってうまいと言える」状態をつくる必要があったんです。震災が、その必要性を強く再認識させたといえます。「石川県といえばこの魚」と自信を持って勧められる存在があれば、地元の人たちがその美味しさを日常的に味わい、外から来た人々にも石川の魚はやっぱりいいと納得してもらえます。そこでは誰か一人や特定の業者だけが得をするのではなく、漁師や仲買人などの市場関係者、飲食店や観光産業など、幅広い関連産業が安定的に利益を得られる仕組みが求められます。ひずみなく、みんなが豊かになれる形で漁業を再構築することが、持続可能な復興には欠かせません。 2020年、70年ぶりに漁業法が改正されたとき、資源管理とセットで「水産業の成長産業化」が掲げられましたが、資源管理はいろいろ国主導で動いていますが、水産業の成長産業化はまだこれから。増やした資源をまさに付加価値をつけて、漁業に携わる皆がもうかる仕組みにすること、成長産業にすることが重要な局面になっていると感じます。復興への道は決して平坦ではありませんが、石川全体の水産業が強く、外からも内からも魅力的に見える成長産業へと脱皮するためのチャンスでもあります。そこに向けて、できることから着実に動かしていきたいと考えています。