1杯500万円のカニも...ブランド力で牽引する石川の漁業、復興と成長産業化への道 #知り続ける能登 #災害に備える
漁業者を中心とした繋がりと機動力ある体制
── お二人とも30代と、漁業界の中では超若手の存在かと思いますが、どうしてブランド戦略に深く関わるようになったのですか 若松さん もともと私は漁協で総務的な業務を担当していましたが、漁師さんたちと接する中で「石川の魚をもっと広く知ってほしい」という思いが強まっていきました。そんな時に、加能ガニのトップブランドを生み出すプロジェクトが始まり、そこに参画することになりました。比較的自由に考えてやらせてもらえた中で、こういった仕事が自分に合っていると気付きました。たとえば、漁協のSNSの運用でも、普段消費者が見れない裏側を発信したり、どういった情報が喜ばれるかを考えて実践するのが面白いですね。 島田さん 私は県庁に入って、海女さんから底びき漁業者まで、規模も漁獲方法も様々な漁業者と関わる機会をいただいてきました。PR関係の仕事の前には、様々な漁の許可を出す仕事や漁業調整、乱獲を防ぎ持続可能な漁業を実現するための資源管理の仕事もしていたので、漁業者と近い立場で仕事をさせてもらっていました。石川の漁業者や漁業に関わる方々をよくしたい、盛り上げたいという気持ちは同じで、漁業者からのアイデアを実現するチームということで、業務上はPRと関係なかったのですが、一緒に参画することになりました。
漁獲量は9割減...能登半島地震の影響と復興への道
── 2024年1月に起きた能登半島地震では、最大約4メートルの海岸隆起が生じ、使えなくなってしまった漁港もあると聞いています。今後の石川の漁業への影響をどのように捉えていますか 島田さん 能登半島地震の影響は想像以上に深刻で、県内の港の9割以上が被災しました。その中でも輪島港は石川県の水産業にとって非常に大きなウエイトを占めています。例年、輪島港では年間およそ20億円の水揚げがあるのですが、震災後は11月の段階で2億円程度しか達しておらず、大幅な減少です。こうした状況は、漁業者の生活そのものにも直結しています。 漁に出られない日々が続けば、生活のために漁業以外の仕事に就く漁業者が出てくるのも当然です。けれど、いったん陸に上がってしまうと、再び漁業に戻ることは非常に難しくなります。人手不足や高齢化が進む中、貴重な漁業者が減ってしまうのは、石川の漁業基盤そのものが揺らぐ重大な問題なんです。ましてや能登に水産業は欠かせない存在、ここが縮小すると能登全体にも関わる話で。 だからこそ、私たちは何とかして、少しでも早く漁に出られる環境を整えようと考えています。漁業を止めないので港の復旧工事はもちろん、船の損傷が少なかったのが不幸中の幸いですし、仮設的な対策や、一時的な荷揚げ方法の工夫など、今できることを積み重ねています。これまでと同様にとはいかなくても、海に出られたら漁師も頑張れる。漁業者が残ってくれれば、将来に向けて再生も図れます。 12月には船舶数でいえば地震前の8割以上は再開しています。とはいえ、港の状況から漁に出られる漁業者とそうでない漁業者もいて、お叱りの声もあります。それでも、清濁飲み込んで今できることをやるしかないと考えています。