今年、日本株の上昇が「ほぼ確実」といえるこれだけの理由【経済の専門家が考察】
日本株上昇の「推進力」として期待される材料
1988年のKKRによるRJRナビスコ買収に象徴される米国の買収ブーム、は2000年のドットコムバブル形成に向かう株高を準備したが、今の日本に同様の動きが起きている。東証・金融庁によるPBR1倍以下の企業の是正要求、日経新聞私の履歴書へのKKR創業者ヘンリー・クラビス氏(30年前は米国でも野蛮人と言われていた)の登場など、日本の政策と企業社会のM&A受容姿勢への変化は驚くばかりである。 カナダ企業であるアリマンタシフォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイの買収提案は、資本の効率性をないがしろにし、低株価を放置してきた日本の株式市場に大きく活を入れるものになるだろう。日産・ホンダの経営統合も台湾メーカーの鴻海による日産買収意向が伏線となっている。 日本は米国が進む株式資本主義に急速にシフトしている。それは海外投資家の日本株買い、企業による自社株買いを通して、日本株のバリュエーション革命を推進するだろう。
2024年、日本株はなぜ停滞したのか?
何故2024年に日経平均株価は4万円寸前で足踏みしたのだろうか。第一は景気実態の低迷、第二は不適切な政策への懸念で上値を刈り取られた、の2つが決定的であろう。 2024年の失速、円安インフレの被害が家計に集中 株高により期待で始まった2024年は日本経済の失速で終わった。主因は物価上昇による実質賃金の減少により実質個人消費が2023年1~3月をピークに減少に転じたためである。2024年6月からの定額減税により補填されたもののその額は3兆円と実質消費減少6兆円の半分に過ぎず、消費水準の低迷からは抜け出せなかった。 図表5に見るように実質個人消費支出を振り返ると、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回っていない。直近の2024年7~9月は前年比小幅プラスに浮上したものの、依然として10年前のピークに比べ4%減の水準にある。 加えて、年初の型式認定不正による自動車減産や中国経済不振による輸出の低迷が、円安によるインバウンドの増加、設備投資の増加などのプラス要素を押し消した。日本の工業基盤が衰弱してしまって円安による生産回復に時間がかかっていること、インフレによる実質所得減のリカバリーに時間がかかっていること等から、円安のプラス効果発現までのタイムラグが長くなっためである。