富良野岳に広がる北海道「天空の花畑」で、身体デトックス!
いつの間にか霧は晴れ、標高が高いとはいえ強い陽射しが照りつけて暑い。吹き渡る風は心地よく、汗を吹き飛ばしてくれる。岩場を巻いて、400mほどの急な登りの木階段を息を切らしつつ登り切ると、山頂手前の「富良野岳稜線分岐」に到達した。 山すその奥には上ホロカメットク山や十勝岳の雄大な景色が広がる。登山口から約2時間半、短い休憩を挟んでひたすら歩いて来たが、想像以上に体力を消耗した。事前情報の通り、急登や難所もなく初心者でも安心して挑戦できる山ではあるが、途中の道は狭く滑落したら止める方法がないような急傾斜があった。 富良野岳は標高2000m近い。周辺には十勝連峰の山々が連なっており、急な天候の変化に対応できる準備が必須だ。
途中に出会ったグループには申し訳ないが、青空が広がり周囲の山々や景色がくっきり見えた。本当に「山の天気は運次第」だ。澄みわたる青空と、その周囲に広がる緑の絨毯。点在する色とりどりの花々が、まるで一枚の絵画のように目に飛び込んでくる。稜線分岐1750mから山頂1912mにかけて、高山植物のお花畑を愛でながら、木の階段をゆっくりと歩く。「天空のお花畑」とは、まさにぴったりの表現だ。
山頂手前、木階段の両端には、右にも左にも小さく可憐な花たちが咲き誇っている。風に吹かれて揺れる姿は「こっちを見て!」と言っているようで、その愛らしさに心を奪われる。花々の美しさは、富良野岳の登山の大きな魅力のひとつで、花の種類も数も多い。日常生活ではあまり花を愛でる機会がないが、山でじっくり観察してみると、心が癒されていくのを感じる。旭川空港でもらった大雪山花ガイドを広げ、花の名前を調べるのも楽しい。
急な木階段の最後の部分を登りきると、そこは山頂。四方には雄大な山々が広がる。眼下には広大な原始ヶ原湿原、遠くには大雪山系や噴煙を上げる十勝岳連峰が堂々そびえ立つ。写真やガイドブックでは伝わらない自然の圧倒的なスケールと美しさに、ただただ感動するばかり。富良野岳は、咲き誇る豊かな高山植物、絶景のパノラマビュー、多様なランドスケープ、そして自然との一体感を楽める、魅力あふれる山だ。 下山後は十勝岳の恵み、良質の温泉に浸かりながら、登山の疲れを癒す(実はこの瞬間が一番の楽しみ)。富良野岳の日帰り登山は、十勝岳ジオパークの自然を存分に楽しめる素晴らしい体験だった。豊かな高山植物、美しい景色、充実感や達成感……。体と心を存分にリセットできた。 photo&text:鈴木博美