”道渕問題ショック”に揺れるJ1仙台が最下位脱出に失敗「このメンバーでやれることをやるしかない」
クラブ史上初のOB監督として、2014シーズンの開幕直後にヘッドコーチから昇格。限られた戦力をやり繰りしてベガルタをJ1の中位に踏みとどまらせ続け、2018シーズンの天皇杯全日本サッカー選手権大会では準優勝に導いた渡邉晋氏との契約更新が、昨シーズン限りで見送られている。より上位を目指してベガルタを成長させていく上での、事実上の解任と見られている。 後任を託された木山監督は、48歳にして初めてJ1の指揮を執った。水戸ホーリーホックを皮切りにジェフ千葉、愛媛FC、モンテディオ山形とJ2で監督を務め、ホーリーホック以外ではJ1昇格プレーオフ進出へ導いたが、J1レベルでどのような手腕を発揮するのかは未知数だった。 実際、ここまでの軌跡を振り返る限りは、期待に見合う結果を残しているとは言えない。2-1で逃げ切った8月8日のヴィッセル神戸戦を最後に14試合連続で白星から遠ざかっているどころか、ホームのユアテックスタジアム仙台では4分け6敗と、リーグで唯一未勝利が続いている。 直近の4試合ではすべて無得点が続いているなかで、グランパス戦ではシュート数自体もわずか1本に終わった。苦境を打開する処方箋を問われた指揮官は、具体策を言及することができなかった。 「うーん……現状のなかで簡単に打開できる問題ではないのかもしれないですけれども、攻撃をする回数を増やすための前段階のプレーの質をひとつひとつ上げていくこともそうですし、より守備の強度を上げて、いい形でボールを取れる回数を増やすことも必要かもしれません」 昨オフにはキャプテンを務めていたDF大岩一貴と、J1通算で65ゴールをあげているFW石原直樹が湘南ベルマーレに、昨シーズンのJ1で最多となる10アシストを記録したDF永戸勝也が鹿島アントラーズへそれぞれ移籍。J2に降格した2004シーズンを皮切りに、実に16年間も在籍してきたチームの精神的支柱、元北朝鮮代表MF梁勇基(現サガン鳥栖)との契約更新も見送られた。 補強の目玉としてサガンから獲得した、元U-23スペイン代表のMFイサック・クエンカが右ひざ半月板を損傷していることが開幕前になって判明。戦列復帰が今月までずれ込むなど、チグハグな面も目立っている。FWジャーメイン良やDF蜂須賀孝治、DF吉野恭平らもけがで長期離脱を余儀なくされていて、FW西村拓真や夏場に加入したDFパラも10月に入って戦列を離れている。 しかし、過密日程下での戦いはベガルタに限られた事態ではない。やり繰りや工夫が求められるなかで勝てない泥沼は、クラブとしての準備不足やチームの完成度の低さを、さらにはピッチ外で連続している騒動が選手たちの集中力にネガティブな影響を与えている証に思えてならない。 「このメンバーのなかでやれることをやるしかないので、しっかりと顔を上げて、チーム全員の鎖が切れないように、気持ちが切れないように、何とか心を整えてチャレンジしていきたい」 木山監督は必死にファイティングポーズを取った。新型コロナウイルス禍に見舞われる前から、2期連続で赤字を計上している経営陣に厳しい視線が向けられている一方で、ファン・サポーターはベガルタおよび選手たちを懸命に応援している。28日から幕を開けるヴィッセル、サンフレッチェ広島、柏レイソル、サガンとのホーム4連戦で、寄せられる期待を結果に変える戦いが待っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)