ウェッブ宇宙望遠鏡が原始星周辺の氷の粒から複雑な有機化合物を発見
私たち生命の起源を宇宙の視点から解明することは、宇宙生物学の目的のひとつかもしれません。ビッグバン以降、水素やヘリウムといった軽元素が生成され、核融合や超新星爆発などの天体現象を通じてさまざまな原子や分子が誕生していきました。これらの過程で生じた炭素を含む有機化合物は、生命の基本的な構成要素となります。そのため、有機化合物から生命が誕生したシナリオを宇宙の歴史の文脈で作り上げることは、地球以外の惑星に知的な生命体が存在するのかを考える上で重要なヒントとなりえます。 今日の宇宙画像 オランダ・ライデン大学のW. R. M. Rocha氏らの研究グループは、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を使い、原始星「IRAS 2A」と「IRAS 23385」の周辺から、エタノールや酢酸といった複雑な有機化合物を含む氷の粒を発見したという論文を発表しました。
生命の源である海が誕生した謎
単純なアルコールやエステル、ニトリル、エタノールのように、炭素原子1個以上、計6個以上の原子をもつ分子は複雑な有機分子(COMs: Complex Organic Molecules、以下COMs)と命名されており、系外惑星の原料となる材料です。こうした系外惑星の原型は、星間物質が「原始星」を取り巻くように集まった原始惑星系円盤であり、衝突や合体を繰り返すことで惑星へと進化していきました。このため、COMsが原始星周辺に存在することは、地球型惑星がハビタブルになる条件のひとつだといいます。 研究グループによると、こうしたCOMsがガス相に存在するのか、あるいは氷の粒の中に存在するのかという問いは、惑星系に水や有機物質を提供する方法を知る上で重要だといいます。地球のように広大な海をもつ惑星は珍しく、多くの地球型惑星は乾燥した地表をもつとみられています。地球型惑星に有機物質を効率よく届けて広大な海を形成するためにはCOMsが氷の粒子内に存在する必要があるものの、これまでは温かいガス相からしか発見されてきませんでした。