八王子市民はなぜ萩生田光一氏を選んだのか…裏金問題で非公認、“統一教会キラー”にも敗れず7選の背景
自民党の惨敗に終わった衆院選。萩生田光一元政調会長が出馬した東京24区(八王子市中西部)は、最も注目された選挙区だ。裏金問題で非公認という逆風に加え、立憲民主党の対立候補は“統一教会キラー”のジャーナリスト・有田芳生氏だった。「今回ばかりは落選危機だ」と複数のメディアが報じていたが、蓋を開けてみれば萩生田氏が7選──。「なぜあれほどの不祥事があっても八王子市民は萩生田氏を選んだのか」。そんな国民の疑問が噴出したのか、投開票日の深夜にX上で「八王子市民」がトレンド入りした。その真意を知るには、当事者に聞いてみるしかない。日刊ゲンダイは「萩生田のお膝元」に向かった。 【写真】“裏金非公認”萩生田光一候補は「女性頼み」の選挙戦…高市早苗氏、昭恵夫人ら猛烈ヨイショ ◇ ◇ ◇ 選挙の熱がまだ冷めやらぬ10月30日、記者は昼ごろにJR八王子駅に到着した。駅前繁華街は平日だというのにかなりの人通りで、町が発展している様子がうかがえる。 選挙区を取材して回る前に、まずは腹ごしらえだ。選挙期間中、萩生田氏は市内にある行きつけの飲食店を回り、SNSに「食リポ」を投稿していた。取り上げられたラーメン屋に行ってみると、店主は普段の萩生田氏の様子についてこう話した。 「この辺りのお店には本当によく来てくれます。いつもフツーに食事して帰っていきますし、文科大臣になっても変わらず来てくれた時は感激しました。今回の選挙はさすがに疲れていたようで、『頑張ってね』とお客さんに励まされていました。これまで国道の整備や地域の防災化を進めてくれて、地元のニーズをちゃんと分かってくれている。町内会などで困ったことがあっても、萩生田さんに言えばすぐに役人や業者とつないでくれるんですよ」 萩生田氏は生まれも育ちも八王子で生粋の地元民だ。有権者から支持を得るのは、やはりこうしたバックグラウンドによるところが大きいようだ。
宗教事情も影響
また、選挙区を語る上で避けて通れないのが宗教事情だ。萩生田氏が選挙事務所を構えていた商店街の外れにある雑貨屋の店主は、こう打ち明ける。 「結局、ここは“創価王国”です。役所にも創価学会員の方が多く働いていると聞きますし、創価大学まである。そんなところで宗教に“NO”を突き付ける有田さんが当選してしまうと、行政が混乱してしまうと思うんですよ。政治倫理からみれば明らかに萩生田さんを選ぶべきではないのですが、こうした八王子事情をどこまで理解しているか分からない有田さんには投票しづらいのです」 市議時代から30年以上かけて、萩生田氏が築き上げた人間関係や地盤は強固だ。駅前にある老舗の呉服屋の女性は、選挙の結果をこう分析する。 「確かにいろいろなことがありましたけど、それでも『もう一度チャンスをあげよう』と萩生田さんに入れる人は多かった。これまで築いてきた信頼が勝ったということではないでしょうか」 実際に当事者に聞いてみて、「地元の論理」がそこにあるのを実感したのだった。 しかし、従来の支持層が離れていったのも事実だ。前回2021年の衆院選で、萩生田氏は約15万票を獲得。2位に10万差をつけ圧勝した。それが一転して、今回は8万票弱。有田氏に7000票差まで迫られた。 「これまでも加計学園や『桜を見る会』などの問題に関与し、今度は統一教会に裏金問題。しかも、キックバックされたカネを机の引き出しに入れていたとか、メチャクチャな説明。地元の人々も堪忍袋の緒が切れたのか、『萩生田が八王子の代議士というのは市民として本当に恥ずかしい』とか、『萩生田を絶対に落としてほしい』という声が多く聞かれました」(地元政界関係者) 少なからぬ八王子市民が葛藤を覚えつつ、投票したことが想像される。次の選挙を迎えるころには、情勢はどうなっているだろうか。 (取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)