物価上昇の今「貯蓄2000万」ではもはや老後を乗り切れない…金融のプロ提案<長寿時代の投資術>
◆「投資するなら自己投資」 投信会社の代表が言うのもなんですが、20代から金融投資をしていると聞くと、私は若干怖い。 まず、若い世代には言いたい。 20、30代は自己投資を一番にすべきです。 まずは力をつけて、自分という財産を増やすのです。 もちろん早い段階から先を見据えて準備することは大事ですが、それは「稼ぐ力」をつけることに向けてほしい。 自己投資は、たとえば語学、マネジメント術などを学ぶことによって、今の会社の中でスキルアップすることかもしれません。 または将来独立することを想定して、副業を始めるという人もいるかもしれません。 繰り返します。 若い世代はまず稼ぐ力をつけ、稼げるようになってから金融投資をすればいいのです。 では50代にとっての「老後2000万円」についてはどうか、考えてみましょう。 だいたい日本人は何でも画一的に考えすぎです。 地方と都会でも違いますし、農業をしていて食糧を自給できるなど、生活の仕方によっては2000万円も要らないでしょう。 ただ、都市部で仕事を引退した夫婦が年金で生活していくという前提で考えれば、私は貯蓄2000万円でも足りないと思います。
◆「老後2000万円」問題に欠けている視点 昨今の物価上昇などを考えると、日本人の平均寿命、男性が約81歳、女性が約87歳まで生きるには3000万円くらいは必要なように思います。 そのうえ、マネタリーベース(日本銀行が世の中に直接的に供給するお金)の拡大によって、さらなる物価高騰も予想されます。 3000万円、いえ3500万円あっても不安が解消されることはないでしょう。 しかし、この「老後2000万円」問題には見事に欠けている視点があります。 政府が投資を推奨し、新NISA制度も施行されたというのに、「老後に資産を運用する」という前提がないのです。 「2000万円」という貯蓄を、いわゆる「切り崩す」前提でしか試算していません。 だとすれば、2000万円あっても、3000万円あっても、不安が消えるわけはないのです。 銀行にただお金を置いておけば、インフレの下ではお金の価値はどんどん下がっていきます。 対してお金を働かせていけば、65歳時点で3000万円あれば十分だと私は考えています。 「いやいや、2000万円でも難しいのに3000万円なんて」という声が聞こえてきそうですが、50代からお金を「働かせて」いけば十分実現可能です。
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