「愛ちゃん2世と呼ばれて」平野美宇の葛藤を感じた母の誓い「五輪は目指しません」と言おうとしたら意外な展開に
5歳のころから卓球で頭角を現した平野美宇さんは「愛ちゃん2世」と注目を浴びます。純粋に卓球を楽しむ美宇さんや母の真理子さんにふってわいてきた、世間の目やプレッシャー。そして、母は「愛ちゃん2世」につきまとう事態を打開する作戦を思いつきます。しかし、想像もしない展開が待っていました。(全4回中の1回) 【写真】卓球を始めた4歳当時でスマッシュがあまりに本格的な平野美宇さん ほか(全20枚)
■おとなしい娘が「卓球したい」と自己主張 ── 今夏のパリ五輪・卓球女子個人でベスト8、団体で銀メダルを獲得した美宇選手が卓球を始めたきっかけを教えてください。
真理子さん:以前、私は静岡県で学校教諭として働いていました。夫がふたつ目の大学を卒業し、夫の故郷・山梨県で就職したのを機に家族で一緒に暮らそうと思い、退職しました。教えるのが好きだったから、美宇が3歳のとき、自宅の一室で卓球教室を始めることに。最初は生徒さんに教えている間、美宇は別室にいたんです。半年ほど経ったある日、「ママの卓球教室に入りたい」と私の服をつかみ、泣いてせがんできました。 もともと美宇は聞きわけがいい、おとなしいタイプ。ワガママを言うこともほとんどなくて。それが卓球に関してだけ非常に強い自己主張をしたんです。驚くとともに、この子は本気で卓球に取り組みたいんだ、その気持ちにしっかり向き合うべきだと感じましたね。とはいえ当時、卓球教室の生徒は小学生ばかり。3歳半の美宇が一緒に練習するのはほかの生徒の迷惑になりかねません。だから「最初はママと一緒に練習して、みんなの迷惑にならないくらい上手になったら教室に入れてあげるよ」と約束をしました。美宇が「やる!」と即答するので、空き時間に教えることになりました。
── 小さいころから美宇選手は、卓球に興味を抱いていたんですね。 真理子さん:「卓球に興味を抱く」というより、「ママの卓球教室に入りたい」感じだったようですね。ドアの向こうの教室からはポンポンと球を打ち合う、軽快な音が聞こえるし、なんだか楽しそうと感じたようで、卓球を始めればママと一緒にいられると思っていたみたいです。 ただ、練習を始めると彼女の集中力と根気に驚かされました。当初は5分程度、ボールとラケットを使い、親子で楽しく遊ぶ感覚だったんです。それが10分、15分と練習時間が長くなっていきました。最初は1~2回しか続かなかったラリーが20回、30回となり、そのうち100回ほど続くように。小学生にひけをとらないくらいの実力がついていると感じて、3歳の終わりから教室に入れることにしました。