「無所属」で代表招集の浅野拓磨が複雑胸中語る「欧州5大リーグに戻るのが目標。100%の取り組みが自分の未来につながる」
広島から2016年夏に名門アーセナルへ加入するも、プレミアリーグでプレーするために必要な労働許可証が取得できなかった浅野は、ブンデスリーガのシュツットガルト、ハノーファー96へ期限付き移籍してチャンスを待った。 しかし、アーセナルで公式戦のピッチに一度も立てないまま、2019年夏にはパルチザンへ3年契約で完全移籍。その間には最終候補にまで残りながらも、2018年のロシアワールドカップ代表入りも逃している。 浅野自身は「どれだけ活躍しても、周囲からは『セルビアだから』と見られる」とセルビアをめぐる事情を明かしたことがある。それでも、捲土重来を期す再出発の地として選んだ2年前の決意を、オンライン取材であらためて繰り返した。 「セルビアへの移籍を決めたときから、その次のステップとしてヨーロッパの5大リーグに戻ってプレーをすることがひとつの目標としてありました。その先にはカタールワールドカップには絶対に出る、という次の目標があります。自分の決断や選択が、すべてそこへ向かっていると思っていただければいいのかな、と」 オンライン取材では言及しなかったが、給料の未払いに加えて、目標へ向かっていく上で自分の実力以外の面で大きな障壁が生じ、悩んだ末にシーズン終盤での契約解除という手段に打って出た跡が浅野の言葉から伝わってくる。 だからこそ、パルチザンでゴールを量産した実力が本物だと証明する意味でも、ミャンマー戦に続いて6月には4試合が待つ、今回の代表シリーズは個人的にも重要になる。 「チームが大変な状況でこそゴールできる。あるいは、こいつがいれば安心できるとチームメイトに思ってもらえる。結果という部分でまだまだ未熟ですけど、自分が理想とするストライカーへ、献身的にプレーする自分の強みも出しながら近づいていきたい」 ミャンマー戦後に国内組が合流して再編される今回の代表シリーズで、FW登録選手は浅野の他には大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)しかいない。森保監督から寄せられる期待をモチベーションに変え、代理人が動いている新天地探しを一時的に頭の片隅に追いやりながら、浅野は日の丸を背負って臨む5連戦へ心技体を高めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)