「九州は男女差別がひどい」“さす九”と揶揄する投稿、出身男性が「地域差別。悪いことはしていない」と反論
●「さす九」を使っても法的責任は生じない?
――「さす九」という言葉を使っても法的な責任は生じないのでしょうか。 地域差別に当たる場合でも、差別されているのは九州地方ですから、法的な責任は生じないのではないでしょうか。九州地方の地方自治体に対する法的責任というものも観念しうるとは思いますが、個々の自治体ではなく九州地方全体を漠然と揶揄することにより各地方自治体に対する法的責任が発生するとも思えません。 なお、特定個人を揶揄する文脈で用いられたときには、当該個人に対する侮辱にあたるかも知れません。仮に当たるとすれば不法行為責任が発生することになります。
●「地域」よりも「不合理な差別」に警鐘を
――ネットでは議論が過熱するばかりで、誹謗中傷を誘引してしまうのではないかと懸念しています。 地域というよりも、女性だからという理由で進学をさせないという、現代社会では不合理な差別としか言いようがない事例が存在することについて警鐘を鳴らしていくべきだと思います。 多かれ少なかれどこの地域でも同じような不合理な差別はあると思われ、これを地域という観点から論じること自体が問題の本質から目を逸らすことになるのではないかと思います。 また、地域の一部の事例をさも地域全体の問題であるかのように取り上げることに合理性はないと思いますし、法的責任の有無はともかく、その地域で生活している人たちの気分を害することにもつながりかねないので、気を付けるべきだと思います。 【プロフィール】 小沢 一仁(おざわ・かずひと)弁護士 2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。 事務所名:インテグラル法律事務所 事務所URL:https://ozawa-lawyer.jp/