<PlayHard特別な夏・磐城>/4 練習再開、独自大会へ 競争激化、夏に懸ける 恩師も成長実感 /福島
政府の緊急事態宣言が解除され、チーム練習が再開されたのが6月8日。14日には早くも練習試合が組まれた。前日の大雨から一転、磐城高校のグラウンドの上には雲一つない青空が広がっていた。この日、渡辺純監督は初めて磐城のユニホームを着て指揮を執った。くしくも対戦相手は前任校のいわき光洋。渡辺監督は「こういう運命だったのかな」と笑った。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら この日の磐城打線は、練習再開からわずか1週間とは思えないほど好調だった。本塁打を含む14安打10得点で快勝。幸先のいいスタートを切った。顧問としていわき光洋ナインを引率してきたのは、3月末まで磐城の校長を務めた阿部武彦さんだった。選手らと一緒にセンバツ中止の悲哀を味わった阿部さんは選手の様子を見て、「しっかり気持ちを切り替えていた」とほっとした様子だった。 渡辺監督の就任で大きく変わったのは、調子の良い選手を積極的に起用することだ。従来はレギュラーを固定して戦ってきたが、学年に関係なく、攻守ともにさまざまなパターンを試しながら練習試合を重ねた。 新しいチームスタイルでチャンスをつかんだのが、馬上斗亜(もうえとあ)選手(3年)だ。昨秋の公式戦では先発出場はなく、センバツ登録時の背番号は13。外野の守備固めでの出場を想定していると告げられたという。「春も夏も甲子園が中止になったことは残念だが、自分にとってはある意味チャンスだと思っている」と肯定的に捉える。打撃力が向上し、甲子園交流試合では背番号8を勝ち取った。「出場機会が増えてモチベーションも上がっている。先発出場をアピールしていきたい」と張り切っている。 控えメンバーの奮闘はレギュラー陣の刺激にもなっている。小川泰生選手(3年)は「出場機会を得た選手がチャンスで活躍している。結果を残さないと外される危機感があり、そういう中で一発が出た時はうれしい」と話す。市毛雄大選手(3年)も「3年生は勉強も頑張らないといけない中で野球との両立を選んでいる。全員相当な覚悟で最後の夏に懸けている」と競争激化の背景を説明した。 6月20日には、練習試合中の選手たちの元を木村保・前監督が訪れた。選手たちと会うのは、3月末の離任式以来。たった2カ月半だが、木村さんは選手たちの成長を感じた。「チームの雰囲気も変わったし、体つきもよくなった。いい方向に向かっている」と笑顔を見せ、選手を1人ずつ呼んで激励。「夏の厳しさを子どもたちはよく分かっているはず。さらにたくましく、強くなって聖地に立つにふさわしい球児になってほしい」とエールを送った。 「夏は負けられない理由があるチームが勝つと思う。この半年間のさまざまな思いは自分たちしか経験していない。みんなと野球ができること、大会が開催されることへの感謝はどのチームよりも実感している。意地と執念で勝ち進みたい」と岩間涼星主将(3年)は語った。「優勝して甲子園に行く」。ナインは強い気持ちで、中止された夏の選手権福島大会に代わる県の独自大会に臨んだ。=つづく