サッカー日本代表の運命は守田英正で変わった? 最悪の流れになりかけた中で見せた機転とは?【西部の目】
⚫️相手のプレッシングに対する解決策
とはいえ、押し込まれる流れは超攻撃的システムにとって不都合なのは変わりがなく、自陣で奪ってもカウンターは散発。すぐにボールを失って攻め込まれることが想定される最悪の流れになりかけていた。 28分にはサウジアラビア代表の3連続シュートをブロック。2つめと3つめは、3人がシュートコースを完全に塞いで防ぎ、日本代表の守備は機敏で集中していた。42分にはスード・アブドゥルハミドの際どいシュートをGK鈴木彩艶がファインセーブ。 先制後は明確に押し込まれる悪い流れ。それを緩和したのが守田の機転だった。ポジションを下げてポゼッションを安定させ、押し返すためのベースを作った。 日本代表の3バック+2ボランチのビルドアップに対し、サウジアラビア代表は3トップ+2人のインサイドハーフ(IH)がマークして圧力をかけていた。シャドーの南野、鎌田に対しては相手のボランチ1人が対応しているが、そこへパスを供給する余裕がない。 そこで守田が3バックのラインへ下りて数的優位を確保。ボールを保持できたときに前進できる形を提示した。所属のスポルティングでこうした駆け引きに慣れている守田は、フィールド上の監督として機能していた。
⚫️堂安、三笘→伊東、前田の快速コンビ
後半から南野に代えて伊東。堂安が右シャドー、伊東が右WBに入る。 イエローカードを貰っていた南野の交代は、その後も執拗に挑発されていたので安全策を採ったのかもしれない。ただ、後半のどこかで伊東を投入するのはこれまでの2試合と同じで予定されていたものだろう。 62分には鎌田に代えて前田。こちらも三笘が左シャドーに移動し、前田が左WBに入る。 この2つの交代で日本代表の守備はより安定した。サウジアラビア代表が3-1-4-2にシステムを変えたこともあり、日本代表の3バックとWBは相手選手とマッチアップする形でズレもなくなった。 サウジアラビア代表の攻撃は鋭さがなくなり、逆に日本代表は伊東、前田のスピードを生かした飛び出しで攻め込む。78分には守田のサイドチェンジ、伊東のカットインから上田と76分に交代していた小川航基がシュート。81分には右CKを小川が見事なヘディングシュートでゴール。2点差とする。 遠藤航、守田が攻守の手綱を握り、5-4-1の守備ブロックで引いても攻め返す。前半のような危うさはなくなっていた。 90分に斜めのハイクロスからヘディングシュートされた場面は、ラフな放り込みに弱い一面を垣間見せたものの、ゲームをコントロールしたまま試合を終えている。 理想どおりではない流れでも落ち着いて踏みとどまり、流れを変え、追加点を奪う。試合巧者ぶりを発揮した勝利だった。 (文:西部謙司)
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