IPOは不要、バイナンスは100年続く企業を目指す:テンCEOインタビュー
リチャード・テン(Richard Teng)氏は、創設者で前CEOのチャンポン・ジャオ氏が米国政府との数十億ドルの和解の一環として取引所を辞めざるを得なかったため、昨年、理想的とは言えない経緯のなかで暗号資産(仮想通貨)業界大手バイナンス(Binance)のトップ座を引き継いた。 だがプラス面で見れば、彼は高収益企業のCEOに就任した。 彼がCEOに就任してからの9カ月間、シンガポールとアラブ首長国連邦で規制当局に勤めた経験を持つテン氏は、ジャオ氏の時代はジャオ氏がリードしていたバイナンスを、取締役会がリードする組織に変革することに重点的に取り組んできた。同社は、本社の所在地について明確なコメントを避けていたが、少なくとも一度は「国際企業」であると曖昧に主張し、常に中国企業ではないと述べてきた。テン氏は、本社所在地となる場所を探している。 2022年後半にライバルのFTXが破綻して以降、暗号資産価格が上昇したこと、伝統的金融機関がこの分野を受け入れたこと(あるいは、進出したこと)、そして米国の規制当局が暗号資産に対する姿勢を軟化させるのではないかとの期待が相まって、同社はIPO(新規株式公開)を検討しているのではないかとの憶測が飛び交っている。 しかし、8月21日にニューヨークでの米CoinDeskとのインタビューで、テン氏は、同社はIPOを検討していないと述べた。 「当社は非常に健全な財務状態にあり、現時点で資金調達やIPOを検討する必要性はまったくない」「経営を引き継いで5カ月目以降、当社は利益を上げており、支出に関しては非常に慎重だ。だから(IPOは)話題に上ったことはない」 取引所の透明性を高める取り組み、すなわち、2022年と比較して昨年はコンプライアンスへの支出を36%増やしたことや、現在も本拠地を置く場所を探していることなど、テン氏は、こうした取り組みは世界中の規制当局と良い関係を築くことにつながり、その結果、より将来を見据えた方向へと会社を導くことになると述べた。 「本当に重要なことは、今後数年間のみならず、今後50年から100年にわたって成功し続ける持続可能な企業を築くこと」とテン氏は述べた。 「それが間違いなく、我々の願いだ」