脱石油依存を目指すサウジアラビア アートに注力する理由は 歴史地区にチームラボが
■ボーダレスに「世界の認識の幅を増やせたら」
サウジアラビアならではの新作もある。 2階へとつながる階段の壁を流れるのは砂の滝。その中に真っ赤なバラが咲き誇っていく。この砂にも没入することができる。 駒見直音アナウンサー 「このように触ると手の上に砂が落ちてくるかのような演出です」 チームラボが中東で初めて巨大ミュージアムを作った思いを、代表の猪子寿之さんに聞いた。 猪子代表 「言葉や論理というのはこの世界を切り刻んでいく。もちろんいい側面もいっぱいあって、そのおかげで科学や文明ができてきたのかもしれない。ただ本当はこの世界はいろいろなものが関係しあっていく。この世界の認識の幅を増やせたらいいなと思っていて、それがどうやったらできるかいまだに分からないけれど」 コンセプトは「地図のないミュージアム」。空間や作品同士の境界がない、ボーダレスの世界が作り出す新感覚のアートだ。 例えば、部屋の中に現れたカラスの群れが縦横無尽に飛び回り、様々な展示空間へと移動していく。草花が芽吹き、花が咲き誇るまでを体感できたかと思えばその花々をのみ込むような波が押し寄せるなど、時間的にも空間的にも流動的でひとつながりな世界が目の前に広がる。 掲げるコンセプトについて猪子さんはこのように話す。 猪子代表 「(地図のないミュージアムに)ついては非常にクレームも多いんですけど。とにかくここはさまようんだ」 しかし、訪れる人には楽しみ方や魅力が存分に伝わっているようだ。 ジッダ在住 「とてもいい、ミラクル。きれい」 ニュージーランド人 「それぞれのストーリーを追っていくところがいい」 「こういうところに来るのは初めてです」 「自分のすべての感覚が引き込まれるような、とてもいい経験です」
■ギャラリーオーナー「夢のようなこと」
今回「チームラボボーダレス ジッダ」をオープンするにあたり大きなバックアップを行ったのがサウジアラビアの文化省だ。 サウジアラビア王国文化省 スポークスパーソン アブドゥラハマン・アルモタワ氏 「チームラボはあらゆる世代の来館者がユニークな体験をし、触発されるミュージアムの一つです。文化省はあらゆる文化的領域で若者の才能を伸ばすことに取り組んでいます。文化省の戦略の一つとして、最も秀でて最も成功したチームラボを誘致しました。我々は文化・アートが全人類共通の言語であると信じています」 さらに、チームラボを招致したのにはもう一つの理由があった。 サウジアラビアは世界的な産油国として知られているが、限りある資源に頼ることがないよう独自の方針「サウジ・ビジョン2030」を掲げ、原油から観光、文化、経済などへの転換を図っている。 そのなかで注力しているのがアートだという。いにしえから多くの人々が訪れ交流がなされてきたジッダでは、アートを楽しむベースがあるという。 サウジアラビアでギャラリーを運営するモハメッドさんは現在の状況について、次のように話した。 アーサーギャラリー モハメッド・ハフィズさん 「私たちは16年前にギャラリーを創設しました。こんにちまでに国内や世界で150を超える展示会を行ってきました。芸術の普及・交流が一層なされたはずです。チームラボがサウジアラビアにミュージアムを開くことは夢のようなことだったと言えます。その夢が実現し、地元の人たち、友人たち、この国を訪問する人たちと分かち合えることをとても誇りに思います」