ファッション業界の「 リセール 」が進化。主力事業より利益率が高いブランドも
ファッションブランドにとって中古品販売はいま、サステイナビリティ活動やマーケティング施策としての位置づけを超え、重要なビジネスチャンスとなりつつある。 リセール・アズ・ア・サービス(中古品販売代行:以下、RaaS)事業者のアーカイブ(Archive Resale)は、サンフランシスコ・ベイエリアを拠点に4年前に設立された。共同創業者のエミリー・ギティンスCEOによると、同社のクライアントであるブランドパートナーのうち数社が、リセールの売上構成比を事業全体の5~20%まで引き上げるという目標を掲げている。女性オフィスワーカー向けアパレルブランド、エムエムラフルアー(M.M.LaFleur)のリセール売上はすでに全体の5%に達した。そのほか数社でリセールの売上構成比が5%に迫りつつある。ザ・ノース・フェイス(The North Face)は米国市場での「めざましい成功」を糧に、英国でもリセール事業を展開する予定だ。アーカイブのブランドパートナーはリセールプログラム拡大を通じて利益を上げているとギティンス氏は言う。
利益を生むビジネスに成長
3月17日~20日にラスベガスで開催されたShoptalk(ショップトーク)に参加したギティンス氏は、米GLOSSYの取材に応えてこう述べている。「昨年2023年、リセールプログラム立ち上げに対するブランド各社の姿勢が変わり、もともとマーケティング効果狙いだったものが、利益を生むビジネスとして期待されるようになった。赤字が当たり前で採算が取れないとよく誤解されるリセールだが、実のところ、利益率が主力事業の2倍に上るブランドや、定価販売より収益効率が高いブランドもあり、このビジネスが成長の原動力となりうる可能性を証明している」。 リセール成果を受けて、アーカイブはブランド各社に対する営業メッセージの内容を調整した。「当初、我々はリセールについて『(社会的に)正しいことだ』と訴え、そのメッセージに賛同したブランドがプログラムに参加した」とギティンス氏は語る。「しかし、当社のクライアントでいえば、オスカー デ ラ レンタ(Oscar de la Renta)がリセール事業を立ち上げたのは、サステイナビリティのためというより、売上増を狙ってのことだ」。 アーカイブのブランドパートナーは昨年1年で2倍に増え、ウラ ジョンソン(Ulla Johnson)、ニューバランス(New Balance)など、合計50社となった。その多くが、返品された商品を廃棄せずに再販して収益化を図る手法をとっている。 「最近、当社のパートナーの一角に大手ブランドが名を連ねるようになった」とギティンス氏はいう。「大手は再販可能な商品の在庫が十分あるため、事業拡大のチャンスだ」。 アーカイブは現在、組織を拡大中で、50人の従業員を抱える。その多くが商品担当とエンジニアリング担当だ。また、同社は英国、EU諸国、カナダなど、新たな市場へも積極的に進出を図っている。 ギティンス氏は次のように語った。「我々はいま、各ブランドのリセールプログラムの収益性確保のため、価格設定やマーチャンダイジング、加工といった業務に必要な各種ツールをそろえるなど、事業運営基盤を構築すべく投資をしている」。 アパレルリセール大手のスレッドアップ(ThredUp)の共同創業者兼CEO、ジェームズ・ラインハート氏によると、同社も収益性確保を目指して事業拡大に注力しているという。「当社を含む多くの同業他社が、リセール市場成長の可能性を証明した。ビジネスでは規模がものを言う。会社は利益を上げれば上げるほど、より大きな存在感を示せるようになる。そのため当社は、規模拡大に向けて経営資源を注ぎ込んできた」。スレッドアップが運営するサイトのブランドパートナーには、メイドウェル(Madewell)、フレーム(Frame)、リフォーメーション(Reformation)などが含まれる。