孤立出産の女性、赤ん坊遺棄で実刑判決 罪に問われない父親たちが取材に語ったこと #令和の親
3月、殺人と死体遺棄の罪に問われた女性(28)に懲役5年6月の実刑判決が言い渡された。誰にも気付かれず、独りで2人の赤ん坊を出産。一度目は「死んだ状態」で生まれて押し入れに、二度目は浴室で生んでクローゼットに、いずれも遺体を隠した。 2人の子にはそれぞれ、父親がいる。罪に問われない彼らは「何とも思っていない」、「俺も悪かった」と異なる感情を口にした。妊娠は男女による性行為の結果、起こる。だが出産に至るまで、身体的、精神的な負担は圧倒的に女性に偏っている。【菅野蘭、中村園子】
妊娠で態度変わる 男性A「都合のいい女」
東京都心まで電車で40分ほど、首都圏のとある街にあるガールズバー。2017年3月、店員として働いていた女性は客として訪れた男性Aと出会った。他の客も交えてカラオケにも出かけ、2人で会うように。ほどなくして交際が始まった。 当時20代後半だったA。「愛している」と口にする女性に「好きだ」と応えたこともあったが、妊娠が発覚すると変わった。 生理が来ないことを明かし、中絶費用の支払いを求める女性に対し、Aは「本当に俺の子どもなのか」と疑った。エコーの写真など妊娠について「証明できる物」の提示を要求。「俺に会う前に妊娠した可能性もある。金なんか払わないよ」と告げ、女性の前から姿を消した。 後にAは検察に対し、こう説明している。 妊娠を告白されて、「面倒なことになったと思った」。「無料でセックスができる都合のいい女」で、性交渉の際、コンドームをつけるように頼まれたことは、ない。病気や妊娠など女性の身に何かあっても「全然、気にしていませんでした」。 Aと連絡が取れなくなった女性はつわりが重く、思うように働けなくなった。1人で暮らすアパートの家賃の支払いに困窮し、知人アパートへの転居を重ねた。18年3月、浴室で出産。赤ん坊は「死んだ状態」だった。遺体はスーツケースに入れ、ビニール製の圧縮袋で密閉した。その後、実家に戻ったことを機に、物置スペースだった屋根裏の押し入れに隠した。 妊娠して一度は病院に行ったものの、妊婦健診を受けず、独りで出産した女性。法廷では、当時の心境について「はっきりとは思い出せない」と述べた。ただ、「中絶 お金ない」「母子手帳をもらうには」「飛び込み出産」など、約半年間のスマートフォンの検索履歴からは心の揺れが見て取れた。断続的に登場する言葉は「自殺」だった。