孤立出産の女性、赤ん坊遺棄で実刑判決 罪に問われない父親たちが取材に語ったこと #令和の親
再び独りで出産「誰にも知られたくなかった」
女性はコールセンターでの電話応対の仕事を得たものの、つわりや貧血、微熱などの体調不良に悩まされた。出社したのは1度だけで、一日の大半を自宅で過ごすようになった。 気持ちは落ち込み、イライラしやすくなった。スマートフォンや自宅のゴミをチェックするなど、自身を束縛するようなBの行動に不満を募らせ、オンラインゲームが唯一の気晴らしとなった。 Bはネット上であれ、女性が自分の知らない相手とゲームすることを嫌がった。ケンカになって「ゲームをやめるか、家を出ていくか、どちらかを選んで」と迫ることもあった。 関係が険悪になっても、他に行く当てのない女性はBとの同居生活を続けた。そして21年8月、浴室で出産。検察側によると、赤ん坊は、湯水から取り上げられなかったことで死亡した。遺体をクローゼットに隠した女性は裁判で、最後まで周囲に助けを求めず、Bにも出産を隠し通そうとした理由を何度も尋ねられた。 女性は「(赤ん坊が)生まれるまで、問題をそのままにしていた」。実家には「見えを張って」助けを求められなかった。出産後は「この子と一緒に死のう」と思ったという。 女性が出産した時、在宅していたBは異変に気付かなかったという。臭いや女性の腹部の膨らみがなくなったことを不審に思って知人に相談。警察への通報は翌月になってからだった。
男性Bを取材 「俺も悪い」後悔の念
裁判でBはこう証言した。 妊娠後、女性が精神的に不安定な状態だと感じたものの、サポートは「求められなかった」。 口げんかとなった際、女性が「家を出て行く」と言ったため、出産や赤ん坊の養育について費用を負担すること以外は「関与しないつもりだった」。もし、自宅で女性が産気づいたとしても「救急車を呼べば何とかなる」と思っていたという。 自身の行動をどう捉えているのか。記者の取材に応じたBは「無理やりにでも病院に連れて行ったり、知り合いに相談していたりしておけばよかった」と後悔を口にし、こう言葉を継いだ。 「妊娠を聞いた時はうれしかったし、楽しみだった。俺も悪い。(女性を)許すとか、許さないとか、ないです」 裁判で女性は赤ん坊2人の遺体を遺棄したことを認めた。一方、浴室で出産した赤ん坊については死産だった可能性が否定できないなどとし、「殺人罪は成立しない」と主張した。 24年3月、首都圏の地方裁判所で女性に判決が言い渡された。懲役5年6月(求刑・懲役7年)で、殺意をもって出産直後の赤ん坊を30分間、水中に放置したことを認定。裁判長は「一人で出産に至った経緯には父親らにも責任があるが、母親として命の尊さに向き合うことなく、犯行を繰り返したことは強い非難に値する」と述べた。女性は判決を不服とし、控訴した。