孤立出産の女性、赤ん坊遺棄で実刑判決 罪に問われない父親たちが取材に語ったこと #令和の親
孤立出産の女性 背景に「境界知能」
こども家庭庁の統計によると、2003~22年に虐待で死亡した生後0日の赤ん坊は176人に上る。全て医療機関外での出産で、父親となる男性の年齢が判明したのは43人にとどまった。 横浜市にある児童相談所職員の研修施設「子どもの虹情報研修センター」のセンター長で、生後0日児の死亡事例を検証している川崎二三彦さん(72)は「無責任な男性の存在が数字に表れている。追い込まれた女性が加害者になってしまっている」と話す。また、統計を検証した大学教授ら10人の有識者は「(母親が)妊娠をパートナーにも相談できず、適切な支援を受けることなく出産し、子どもが死亡した事例が多い」と総括した。 孤立出産の末、遺体を隠したなどとして逮捕された女性らの精神鑑定をしてきた精神科医の興野康也さん(47)=熊本県=は、軽度の知的障害や、知的障害ではないものの知的能力がやや低い「境界知能」が事件の背景にあると指摘する。 人とのコミュニケーションが不得意で孤立しやすく、勉強や金銭管理、仕事を続けることを苦手とするケースが多く、興野さんは「周りからは『個人の性格』とみなされ、サポートが得られにくい」と指摘する。 海外では、匿名での出産を望む女性を支援しながら、子どもの出自を知る権利を保障しようとする制度がある。フランスでは、誰にも身元を知られずに病院で出産することが認められている。子の出自を知る権利に関しても法律がある。ドイツでも法律が整備され、妊婦健診や分娩の費用は国が負担している。 日本には、こうした仕組みがない中で、熊本県の慈恵病院が病院の担当者だけに身元を明かす「内密出産」を全国で唯一、導入している。この取り組みを踏襲する形で、国は22年に指針を策定したが、身元情報の管理や開示方法を病院に委ねるなど課題は山積しており、全国的な広がりは見られない。 母子ともに危険を伴う孤立出産を防ぎ、医療体制が整った病院で安全に産んでほしい。慈恵病院の蓮田健院長はそう願い、各都道府県に1カ所ずつ、「内密出産」ができる医療機関を設けることや、国による法整備を求めている。
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。