孤立出産の女性、赤ん坊遺棄で実刑判決 罪に問われない父親たちが取材に語ったこと #令和の親
男性Aを取材 口にした無責任な言葉
Aは今、何を思うのか。消息をつかむため、2人が出会った夜の街を歩いた。関係者を訪ね歩くと、街から姿を消したAと連絡を取ることができた。 深夜、人もまばらな私鉄の駅前に背が高くがっしりとした体形の男性が現れた。 事件について「(女性の)名前を聞いても最初は分からなくて、(検察に示された顔写真を見て)ああ、あの子ねって感じ。最初知ったときは、やってることが結構、えぐかったから、鳥肌が立った」という。 女性が罪に問われたことについては、「何とも思ってない。ていうか、俺と会わなくなってから、すぐ(女性に)男ができてたから」。遺棄された赤ん坊についても「俺の子じゃなかった、はず」と口にした。 Aは、検察に「女性が病気になろうが、妊娠しようが関係ない」と話したという。この言葉の意味を問うと「昔はそうだった。けど、今はそうじゃない」。そして、こう続けた。 「もう、そういう遊びはしない。子どもをつくるんだったら、ちゃんと付き合ってからにしようと思っている」 気持ちの変化は、女性との出来事と「関係ない。年齢的なもの」だという。
遺体は発見されないまま 授かった新たな命
スーツケースに隠した赤ん坊の遺体が誰にも発見されないまま2年余。女性はマッチングアプリを通じて男性Bと知り合った。女性の「責任感の強さ」にひかれたBが交際を申し込み、2人は付き合うようになった。 この時期、女性は車中やネットカフェなど寝床を転々としていた。家族と折り合いが悪くなり実家を出たものの生活費を工面できず、男性と時間を過ごして見返りにお金を受け取る「パパ活」などで、日々の生活をしのいでいた。 20年11月、困窮する様子を見かねたBはアパートを契約した。2人の同居生活が始まり1カ月ほどして、女性の妊娠が判明した。新たな命を授かったことを喜んだBは、女性に結婚を申し込んだ。女性はこのとき「今回は、幸せになれる」と思ったという。 ただ、女性は病院に行かなかった。保険証を持っていないため、高額な医療費が必要になると考えたからだ。Bには「保険証は実家にあるが、家族とケンカをして追い出されたので取りに行きづらい」と取り繕った。 1、2度は病院に行くように言ったBだが、「(女性が)聞き入れない」と考えたため、受診を強く促さなかった。次第に、2人の気持ちはすれ違い、婚姻届は出されないままになった。