「ボコ・ハラム」の少女拉致 ナイジェリアの人身売買の実態は?
5月5日、ナイジェリア北東部で200名以上の女子生徒を誘拐したイスラム過激派「ボコ・ハラム」が、犯行声明を出しました。これに対して、世界中で救出を願う声が上がっています。この事件の背景には、アフリカでイスラム過激派が台頭していることだけでなく、人身取引(人身売買)が横行していることがあります。
アフリカを代表するイスラム過激派
ボコ・ハラムは2002年頃にナイジェリアで誕生した若い組織です。しかし、そのテロ活動の激しさから、「ナイジェリアのタリバン」とも呼ばれています。 「ボコ・ハラム」とはナイジェリアの主な言語の一つであるハウサ語で「西洋の教育は罪」を意味します。進化論などイスラムの教えに反する内容が教えられる教育だけでなく、やはりイスラムの教えに反するアルコール販売などを認めるナイジェリアの現体制を批判。2009年から警察や軍隊と衝突を繰り返してきました。 米国務省によると、2012年の1年間で、公的機関などへの襲撃事件は364回。それによる死者は1132名にのぼります。2013年3月には北東部3州で非常事態宣言が発布され、30万人以上が避難する事態になりました。さらに2014年2月には、私立の中高一貫校が襲撃され、寄宿舎にいた男子学生43名が殺害されています。
人身取引のターミナルとしてのナイジェリア
犯行声明のなかで、ボコ・ハラムは少女たちを「奴隷」として拘束しており、「花嫁として売り飛ばす」と宣言。 人間の取引は、2003年に発効した人身取引議定書で禁じられています。しかし、アフリカでは貧困を背景に、無報酬やそれに近い条件での強制労働、性的搾取、臓器売買などを目的とした人身取引が横行しており、ボコ・ハラムの宣言を単なるおどしと受け取ることはできません。 ナイジェリアは1億6000万人以上を抱え、その人口の多さもあって、アフリカの人身取引の中心地の一つになっています。人身取引の根絶に取り組む「フリー・ウォーク財団」の2013年統計によると、ナイジェリアでは約70万人が奴隷状態にあります。これはインド、中国、パキスタンに次ぐ世界ワースト4位。 さらに「人身取引と闘う国連グローバル・イニシアティブ」によると、取り引きされる人の66パーセントが成人女性、13パーセントが少女。そのほとんどが、誘拐されたり、親族の借金のために売られたりした人たちです。 ナイジェリア国内で人身取引が横行しているだけでなく、ナイジェリアから先進国を含む国外へ売られていく人も数多くあります。例えば2011年1年間で、人身取引の結果として英国にわたったナイジェリア人は、163人にのぼったとBBCは伝えています。